近づく米「雇用の最大化」目標達成…雇用の回復は持続。労働需給の逼迫継続から、賃金上昇圧力は当面高止まりへ

近づく米「雇用の最大化」目標達成…雇用の回復は持続。労働需給の逼迫継続から、賃金上昇圧力は当面高止まりへ
(写真はイメージです/PIXTA)

米国の労働市場は新型コロナの影響で20年春先に大幅な落ち込みを示した後、20年5月以降は回復基調が持続している一方、労働需給の逼迫を背景に賃金上昇圧力が高まっています。本記事ではニッセイ基礎研究所の窪谷浩氏が、米国労働市場の現況と今後の見通しについて解説します。※本記事は、ニッセイ基礎研究所のレポートを転載したものです。

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    FOMC参加者による労働市場の評価…多くの参加者は既に「雇用の最大化」目標達成と判断

     

    22年1月に行われたFOMC会合の議事要旨では、「多くの参加者は、失業率の低さ、賃金圧力の上昇、過去最高に近い雇用水準を含む労働市場の強さの兆候を挙げ、労働市場の状況はすでに最大雇用と一致しているか、それに非常に近いと見ていると述べた」ことが明記された。

     

    このため、多くのFOMC参加者が、労働市場が既に政策金利引き上げの条件である「雇用の最大化」目標を達成したと評価していることが分かる。

     

    もっとも、同議事要旨には「何人かの参加者は、経済はおそらくはまだ最大雇用に達しておらず、プライムエイジ層の労働者でさえ、労働参加率がパンデミック以前よりも低い水準にとどまっていることや、部門間で労働力を再配分すれば、長期的には雇用水準が高まる可能性があることを指摘している」としており、一部の参加者は「雇用の最大化」の達成に疑義を示しているようだ。

     

    いずれにせよ、インフレ率が40年ぶりの水準となる中、3月FOMC会合で政策金利を引き上げることが確実となっている。

    今後の見通し

    労働供給は緩やかに回復も、労働需給の逼迫から当面賃金は高止まりへ

     

    今後の労働市場の見通しは引き続き、新型コロナの感染動向に大きく左右される。足元でオミクロン株の感染状況は改善してきており、コロナ関連を原因とする非就業者の職場復帰などから、労働供給は回復の持続が見込まれる。もっとも、プライムエイジの労働参加率が新型コロナの流行前の水準に回復するには今暫く時間を要するとみられる。

     

    一方、FRBによる金融緩和解除に伴って、労働需要は今後一定程度減退することが見込まれる。もっとも、足元で企業の人手不足は深刻なため、短期的には労働需要の堅調は持続しよう。

     

    前述のように労働需給が逼迫する中で実質賃金はマイナスとなっており、当面は幅広い業種で賃上げ要求圧力は強まるとみられる。このため、労働需給の逼迫を背景に当面賃金上昇圧力は高止まりしよう。

     

    一方、メインシナリオではないが、FRBの金融引き締めにも関わらず、労働需給の逼迫が長期化する場合には賃金上昇がインフレを押上げ、インフレがさらに賃金を押し上げるスパイラル的なインフレ加速が懸念される。

     

     

    窪谷 浩

    ニッセイ基礎研究所

     

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    ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年2月25日に公開したレポートを転載したものです。

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