在宅勤務の利用状況から見る郊外や地方移住の可能性

「第7回新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」より

在宅勤務の利用状況から見る郊外や地方移住の可能性
(写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍以降の人口動態について総務省の住民基本台帳移動報告をみると、2014年以降初めて東京23区が転出超過となりました。新型コロナの影響で働き方に変化が生まれるなか、本記事ではニッセイ基礎研究所の坊美生子氏が、2021年12月にニッセイ基礎研究所が実施した調査結果をもとにコロナ禍以降の「郊外・地方移住」のニーズと今後の見通しについてみていきます。※本記事は、ニッセイ基礎研究所のレポートを転載したものです。

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    はじめに

    新型コロナウイルスの感染拡大後、働き方やライフスタイルの変化によって、東京都心から郊外や地方への移住が増えるかどうかが注目されてきた。在宅勤務の広がりによって、通勤距離に縛られない人が増えれば、人口密集を避けて、郊外や地方部で、ゆとりのある住まいを選択する人が増えるのではないか、というものである。

     

    実際に、住宅購入を検討する人を対象としたアンケートでは、「収納量」や「広いリビング」、「部屋数」など、住まいにゆとりや快適さを求める傾向が強まっている

    ※ 株式会社リクルート『住宅購入・建築検討者』調査(2021年)。

     

    コロナ禍以降の人口動態について、総務省の住民基本台帳移動報告を見ると、2021年の1年間で、東京23区への他の道府県からの転入(外国人を含む)は365,174人、転出(同)は380,002人で、14,828人の転出超過となった※1。NHKニュースによると、東京23区が転出超過となったのは、現在の方法で統計を取り始めた2014年以降、初めてだという※2

    ※1 e-Stat(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200523&tstat=000000070001)

    ※2 NHK「NEWS WEB」2022年1月28日より。

     

    同報告によると、転出先の上位3位は神奈川県72,632人、埼玉県63,317人、千葉県50,525人となっており、実際には隣接県への転出が半数を占めている。コロナ禍によって、地方移住が進んだとは言えないが、今後の動向には注目が集まっている。

     

    大企業や大学が東京に集中する状況が変わらなければ、今後、郊外や地方への転出が増えるかどうかの鍵を握る重要な要素の一つは、テレワークがどれぐらい人々の間に浸透、拡大していくかだろう。

     

    そこで本稿では、ニッセイ基礎研究所が2021年12月に実施した「第7回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」結果から、在宅勤務や働き方に関する部分を抜粋し、今後の見通しについて検討したい
    ※ 第7回調査は2021年12月22~28日、全国の 20~74歳の男女を対象にインターネットで実施。有効回答は 2,543人。調査時点における消費行動などについて、新型コロナウイルス感染拡大前の2020年1月頃に比べた状況を尋ねた。

    エリア別にみた在宅勤務の利用率

    まず、在宅勤務の利用状況からみていきたい。

     

    調査を行った2021年12月末時点で、就業者(n=1,697)の在宅勤務利用率(全体から「利用していない・該当しない」の比率を引いた値)の全国平均は、38.8%だった[図表1]。

     

    [図表1]新型コロナ感染拡大前と比較した在宅勤務の利用状況
    [図表1]新型コロナ感染拡大前と比較した在宅勤務の利用状況

     

    エリア別に見ると、東京圏では48.6%であり、全国平均より約10ポイント高かった。京阪神は37.5%だった。その他の地域では全国平均よりも6ポイント以上低い32.5%となり、エリアごとの差が大きかった。
    ※ 東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県。

     

    エリアごとに回答者の属性を見ると、東京圏は、従業員1,000人以上の企業で働く人の割合が31.8%となり、全国の23.6%を約8ポイント上回っていた(図表略)。業務のデジタル化など、在宅勤務の環境整備に投資しやすい大企業の勤務割合が高いことが、利用率に影響したとみられる。

     

    また、業種別で見ると、東京圏は情報通信業が11.1%となり、全国平均の5.3%を約6ポイント上回っていた。情報通信業は、在宅勤務しやすい業務が多いと考えられるため、利用率にも影響したとみられる。

     

    次に、新型コロナウイルスの感染拡大前に比べた在宅勤務の増減についてみると、「増加」「やや増加」の合計は、全国平均は18.5%だった[前掲図表1]。エリア別にみると、東京圏では28.1%、京阪神では16.5%、その他の地域では12.4%だった。東京圏では増加幅が顕著に大きく、コロナ禍以降、企業の間で在宅勤務制度の導入が広がったことを示していると言える。

     

    因みに、調査を行った2021年12月末時点はオミクロン株の流行前で、コロナの感染状況が比較的落ち着いた時期であり、アフターコロナの利用状況を検討する上でも、参考になると考えられる。

     

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    ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年2月24日に公開したレポートを転載したものです。

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