SWIFTからのロシア排除が株式市場に与える影響について (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●西側諸国はロシアの一部銀行をSWIFTから排除し、ロシア中央銀行にも制裁を課すことを決定。

●ロシアの輸出は鉱物製品が全体の5割強を占めているがSWIFT排除で大きく影響を受けることに。

●SWIFT排除は一部銀行のため、ロシアの貿易は完全停止せず、株式市場に混乱回避の余地あり。

西側諸国はロシアの一部銀行をSWIFTから排除し、ロシア中央銀行にも制裁を課すことを決定

欧州連合(EU)の欧州委員会と、フランス、ドイツ、イタリア、英国、カナダ、米国の6ヵ国は2月26日、ロシアに対する追加経済制裁に関する共同声明を発表しました。具体的な制裁措置として、特定のロシアの銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除することや、ロシア中央銀行が外貨準備を活用できないように制限を課すこと、などが示されました。

 

ロシアの銀行がSWIFTから排除されると、国際資金決済ができなくなるため、例えばロシアから欧州へのエネルギー供給が途絶えることも考えられます。そのため、当初はドイツなどに慎重論もみられましたが、排除の対象を一部の銀行とすることで、最終的に慎重派の国々は賛成に転じたとみられます。また、ロシア中央銀行への制裁は、外貨準備を原資とする通貨ルーブルの買い支えを抑制する狙いがあると思われます。

ロシアの輸出は鉱物製品が全体の5割強を占めているがSWIFT排除で大きく影響を受けることに

今回のSWIFT排除などにより、制裁の効果はかなり高まる見通しで、ロシアについては、経済成長率の低下や、株式、債券、通貨の下落が予想されます。なお、ロシアの貿易構造を確認すると、2020年の総輸出額は約3,400億ドルで、国別シェアは中国が14.6%と突出しており、次にオランダ(7.4%)、英国(6.9%)、ドイツ(5.5%)が続きます(図表1)。米国と日本については、それぞれ3.2%、2.7%程度です。

 

(注)データは2020年。輸出総額は3,371億ドル。輸出国の船積み価格(FOB)。シェアの単位は%。日本のシェアは2.7%。 (出所)ロシア連邦税関局、JETROのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]ロシアの輸出取引 (注)データは2020年。輸出総額は3,371億ドル。輸出国の船積み価格(FOB)。シェアの単位は%。日本のシェアは2.7%。
(出所)ロシア連邦税関局、JETROのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

ロシアの輸出を品目別にみると、燃料・エネルギー製品を含む鉱物製品が51.3%を占めており、資源輸出に大きく依存した構造であることが分かります。一方、輸入については、2020年の総額は約2,300億ドル、国別シェアはやはり中国が23.7%とトップに位置しており、品目別では機械・設備・輸送用機器が47.6%を占めています(図表2)。SWIFT排除により、これらの貿易取引は、大きく影響を受けることになります。

 

(注)データは2020年。輸入総額は2,317億ドル。輸入国の通関地点における貨物価格(CIF)。シェアの単位は%。 (出所)ロシア連邦税関局、JETROのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]ロシアの輸入取引 (注)データは2020年。輸入総額は2,317億ドル。輸入国の通関地点における貨物価格(CIF)。シェアの単位は%。
(出所)ロシア連邦税関局、JETROのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

SWIFT排除は一部銀行のため、ロシアの貿易は完全停止せず、株式市場に混乱回避の余地あり

次に、ロシアからの鉱物性燃料の輸入が多い国について、鉱物性燃料の輸入全体に占めるロシアのシェアを確認すると、オランダが17.1%、ドイツは15.1%、日本は6.1%となっています(2020年時点、以下同じ)。これらの国々は輸入元の分散が図られているものの、ポーランドは54.2%に達しており、ロシアからの鉱物性燃料の供給が不安定になった場合、経済への影響が懸念されます。

 

弊社は、ロシアの貿易取引が中国を除き完全に停止した場合、世界経済を1.28%ポイント下押すと試算しており、この場合、世界的な株式市場の混乱も予想されます。ただ、西側諸国は、SWIFT排除の対象銀行を絞り、貿易取引が完全停止にならないように配慮すると思われます。したがって、対象銀行が予想外に広がり原油急騰とならない限り、SWIFT排除による株式市場の深刻な混乱は、回避できる余地があるとみています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『SWIFTからのロシア排除が株式市場に与える影響について』を参照)。

 

(2022年2月28日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

投資情報グループは、運用や調査経験豊富なプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの情報発信を行っています。幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、年間で約800本の金融市場・経済レポートの発行の他、YouTube等の動画、Twitterでの情報発信を行っています。

著者紹介

連載【市川雅浩・チーフマーケットストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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