(※写真はイメージです/PIXTA)

図書館などの公的な施設を民間企業に運営委託するとコストが削減でき、サービスも向上するといいます。公共施設を民間企業に管理運営を任せる指定管理者制度は魔法の杖なのでしょうか。渡瀬裕哉氏が著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)で解説します。

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図書館のポテンシャルを引き出す民間の力

学問の基本となるのは色々な本を読むことです。個人で何万冊もの蔵書を持つような人もいますが、多くの人は図書館などを利用して調べ物をしたり、あるいは趣味の読書をしたりするのではないでしょうか。

 

日本に初めて近代的な図書館ができたのは、明治5年(1872)のことです。それ以前にも、蔵書を管理し一般への貸出を行う人はありましたが、明治初期には公共の社会施設としての図書館が福澤諭吉のような知識人によって紹介されています。そこで、明治政府は東京の湯島に官立公共図書館である「書籍館(しょじゃくかん)」を設立することとなりました。今からおよそ150年近く前のことです。

 

この書籍館が東京図書館、帝国図書館と名称を変え、戦後、GHQへ依頼してアメリカ本国から専門家を招き、昭和24年(1949)に現在の国立国会図書館が設立されます。帝国図書館や議会図書館の蔵書は、ほとんどが国立国会図書館に引き継がれています。

 

国立国会図書館には、日本国内で出版されたあらゆる書物が集まってきます。絶版書を探したり、戦前の書籍を読んだりするのにはとても便利です。根拠法は一般の公共図書館とは別の「国立国会図書館法」となっていて、国内の図書館の中でも少し特別な役割があります。政府や国会からの調査研究依頼に応じ、「国会議員の職務の遂行に資する」ことが定められています(第二条)。館長は議会の指名と承認によって任命されます。

 

一般的な公共図書館は、昭和25年(1950)4月に公布された図書館法に基づいて運営され、一般の人たちが無料で利用することができるようになっています。無料といっても、税金をかけて運営されているということです。

 

この法律の適用範囲は、地方公共団体が運営する公立図書館のほか、学校を除く様々な団体が運営する私立図書館にも及びます。一般公衆が本に触れることができ、「国民の教育と文化の発展に寄与する」目的が謳われています。特に公立図書館は、入館や資料の貸出に際しては対価を徴収してはならないと定められています(第十七条)。

 

大量の蔵書を良好な状態で管理し多くの人々の利用に提供するには、人件費や施設の維持管理費など莫大なコストがかかります。図書をはじめとする資料を収集するため、億円単位のコストもかかります。それでいて、利用者から対価を得て利益を生み出すことは、法律によって規制されています。利用率が低下するに任せていては、存在意義を問われて予算獲得もままなりません。予算が得られなければ、蔵書の管理もままなりません。このため、図書館のあり方や運営の仕方を含め、見直しがされてきています。

 

図書館によっては、役所が運営するのではなく、民間企業に委託する試みも行われています。商業施設との合併や集客イベント、カフェの併設といった事業を通じて、できるだけ多くの人たちに来てもらおうということです。そして集まった人たちが楽しんで有料で利用してもらえるようなコンテンツを作り、収支を改善していこうとしているわけです。見た目にも、いかにも古臭い建物が斬新なデザインになったことによって、SNSで画像が話題になる図書館も増えてきました。

 

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    ※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

    無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

    無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

    渡瀬 裕哉

    ワニブックス

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