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世界に誇る日本の食文化のゆくえ
海外で日本食が注目されるようになってから、40年ほど経ちました。1970年代後半から、アメリカを中心に健康的な食生活や自然食がブームとなり、その中で日本の食文化がヘルシーで自然ということで非常に人気が高まったのです。
最初に日本食がアメリカでビジネスとして進出したのは、故青木廣彰氏が成功させた鉄板焼きです。「BENIHANA」第一号店の創業が1960年代半ばのことで、以来、フランチャイズのレストランチェーンとして世界百店舗を展開する成功を収めました。
次いで、1970年代から急速に広がったのが寿司人気です。それ以後も、天ぷらやすき焼き、懐石料理からラーメンまで、色々な日本食が海外でも楽しまれています。
特に寿司は、世界的な人気食となりました。日本では、全国の寿司組合で構成される全国すし商生活衛生同業組合連合会(全すし連)が昭和36年(1961)に11月1日を「全国すしの日」と定め、各店舗でイベントなども行われています。これとは別に、世界的な記念日として6月18日の「International Sushi Day(国際寿司の日)」もあります。
最近はヨーロッパでも人気が高く、フランスは欧州最大の寿司消費国となっています。アボカドのような元の日本の寿司では使われなかったネタも登場し、現地化したものもあります。アメリカで考案されたカリフォルニアロールなどは、現在では日本でも人気となっています。
お寿司は、もはや国際公共財です。仮想通貨にも「SUSHI」の名称がついたものがあるほどで、食べ物としてだけでなくブランドとして認識されているのです。
お寿司などの各料理を含む「日本食」という枠組みも世界に認知され、評価されるようになっています。日本文化としての「和食」は、平成25年(2013)12月、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。特定の料理というよりも、日本の日常生活や年中行事、日本特有の四季や気候と結びついた食の様式が無形文化遺産として認められたのです。
近年、世界で日本食レストランが急拡大しています。農林水産省の資料では、平成18年(2006)におよそ2万4000店だった店舗数が10年足らずで10万店を超え、令和元年(2019)には15万6000店と増え続けているのです。2017年からの2年間でも、店舗数は3割増です。店舗数がもっとも多いのはアジア圏ですが、それに次いで多いのが日本食ブームの火付け役となったアメリカ、その後を追うヨーロッパのほか、中南米や中東、アフリカ、ロシアにも日本食レストランが増えていっています。
この調査は「現地で日本食レストランとして扱われている店舗等」を対象としているので、実際には他のメニューと合わせてひとつ、ふたつ日本食メニューを置く店も含めれば、もっと数が多くなると考えられます。日本食は、世界中で一過性のブームではなく、もっと地に足の着いた形で人気が出てきているのです。
これだけの数にのぼる日本食レストランですが、日本人が経営している店舗は少ないようです。筆者がアメリカで日本食レストランを利用するときにも、韓国系アメリカ人が経営している店が多い印象です。
同じアジア系だからということなのでしょうが、たとえば日本で中華料理店を日本人が経営していたり、中華料理を勉強したフィリピン人が店を構えていたりするのと同じです。最初は日本人が経営していても、撤退することになった際にその後の事業を引き受けるのは、日本人とは限らない場合もあるでしょう。