定年退職後、地方に出かけては「気ままな老後」を過ごしていた富山さん(仮名)。ある日、妹の哀川さん(仮名)あてに病院から一本の電話が。内容は富山さんが脳溢血で緊急搬送されたというものでした。その時、哀川さんが抱いた感情は「心配」ではなく……。のぞみ総合事務所代表司法書士の岡信太郎氏が、実際のエピソードをもとに、お金にまつわる「過酷な現実」を紹介します。

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“自由気ままな老後生活”に隠れた妹の「大きな負担」

ここまで好き勝手に生きてきて、本人はそれで満足しているのだろうか……。それとも、周りに迷惑をかけたことを後悔しているのか。今となっては知るよしもありません。

 

富山さん(71歳、男性)は、定年後は勤め先や取引先からの再雇用の誘いを断わり、地方行脚の毎日を過ごしていました。各地に出かけては、お気に入りのスナックに入り浸っていました。

 

そんなふうに自由気ままに退職後の人生を過ごしていた富山さん。傍からは理想の老後生活のようにも見えます。しかし、その裏で妹が大きな負担を強いられていました。

 

富山さんは、ずいぶん前に妻と離婚し、今は一人暮らしをしています。元々放蕩するタイプだったこともあり、子どもは妻が引き取って以降は連絡を取っていません。

 

今、富山さんが当てにするのは近くに住む妹の哀川さん(68歳、女性)だけです。富山さんにはペットの犬がいて、遠出する際は哀川さんに預けていきます。とはいえ、哀川さんが住むマンションはペット禁止なのでいつも対応に困っています。

 

それだけではありません。新聞の支払いについて自分の家ではなく、哀川さんの家に集金に行くよう指示しています。哀川さんが立て替えることも多く、都合よく使われている気がしてなりません。

 

今回も、富山さんが哀川さんの自宅にやってきました。家をしばらく空けるからと、愛犬と家のカギを預けられました。しまいには、〝部屋が散らかっているから、時間があったら掃除しといて……〞と何とも勝手なことを言って去ってしまいました。

 

いくら兄妹といえどもそこまでする筋合いはないと感じ、哀川さんは家の掃除のことは放っておくことにしました。

いい加減にして…「病院」からかかってきた突然の電話

富山さんが出かけたその夜、哀川さんの家の電話が鳴りました。時間は夜の11時、こんな時刻にいったい何の電話だろうかと、哀川さんは不審に思いました。恐る恐る受話器を耳に当てると、まったく予期しないところからでした。

 

「こちら〇〇県にあるメディカル山北病院(仮名)です」

 

「富山さんが脳溢血で倒れ、当病院に緊急搬送されました。かなり難しい状況です。携帯に〝妹〞と登録があり発信履歴が何件かあったので、連絡させて頂きました。手術にはご家族の同意が必要です」

 

哀川さんは、あまりに突然のことで困惑するばかりです。突然の連絡で状況をよく呑み込めませんが、緊急ということでは手術に同意する他ありません。

 

今日一方的に犬やカギを預けて遊びに出かけたかと思いきや、深夜に旅先で倒れたなどあまりに勝手過ぎます。やりたい放題した結果がこれでは、心配の気持ちよりもいい加減にしてほしいという思いでいっぱいになってしまいました。

 

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本記事は、岡信太郎氏の著書『財産消滅~老後の過酷な現実と財産を守る10の対策~』(ポプラ社)から一部を抜粋し、再編集したものです。
※登場人物は全て架空の人物であり、守秘義務に反しないようにストーリーを展開しています。

財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策

財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策

岡 信太郎

ポプラ社

5年後には「65歳以上の5人に一人が認知症を発症する」といわれている昨今の超高齢社会。認知症は介護などの生活面だけではなく、資産運用や契約など財産面にも大きな影響を与えます。 多くの認知症患者の成年後後見人として…

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