定年退職後、地方に出かけては「気ままな老後」を過ごしていた富山さん(仮名)。ある日、妹の哀川さん(仮名)あてに病院から一本の電話が。内容は富山さんが脳溢血で緊急搬送されたというものでした。その時、哀川さんが抱いた感情は「心配」ではなく……。のぞみ総合事務所代表司法書士の岡信太郎氏が、実際のエピソードをもとに、お金にまつわる「過酷な現実」を紹介します。

「本人でないと引き出せない」…妹の絶望

銀行に行きATMでこれまでの立替金を引き出そうとしました。しかし、よくよく考えたら暗証番号が分かりません。本人の誕生日などを入れてみましたが、どれも該当しません。〝どうしよう、どうしよう〞と焦って番号を入力したため、とうとうATMでは取り扱いができなくなってしまいました。

 

仕方なく窓口に行き、事情を説明しました。兄が旅先で倒れたこと、民間の救急車で運ばれたこと、自分が立て替えていること……。窓口の担当者はとても親身に話を聞いてくれました。しかし、申し訳なさそうに次のように言いました。

 

「ご事情はお察ししますが、規定によりご本人でないと下ろせないことになっています」

 

兄の通帳から引き出しができないとなると、これから先も自分が立て替えることになります。今は犬の餌代すら哀川さんが負担しています。新聞代の集金ももうすぐです。本人に関する支払いなので、本人の口座が使えないことに憤りを感じています。

 

どうにもならない状況とともに、最後の最後まで妹に迷惑をかける兄のことが許せない気持ちになってしまいました。

 

 

岡 信太郎

司法書士のぞみ総合事務所

代表司法書士

 


 

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本記事は、岡信太郎氏の著書『財産消滅~老後の過酷な現実と財産を守る10の対策~』(ポプラ社)から一部を抜粋し、再編集したものです。
※登場人物は全て架空の人物であり、守秘義務に反しないようにストーリーを展開しています。

財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策

財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策

岡 信太郎

ポプラ社

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