(※写真はイメージです/PIXTA)

会社が潰れる本当の原因は、赤字や債務でなく「資金不足」です。資金不足に陥らないためには、助成金や補助金、借金などの様々な資金繰り手段はもちろんのこと、節税などによって手元のキャッシュを減らさない工夫も欠かせません。ここでは、資金繰り専門税理士の菅原由一氏が「顧問税理士から教われない資金繰りテクニック」を公開します。

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    社員の給料を上げると法人税が安くなる「制度」

    給料を増やしたい時は、所得拡大促進税制を検討。これは「賃上げ税制」とも呼ばれるもので、この制度を使うことにより、給料の増額に応じた税額控除が受けられる。

     

    分かりやすく言えば、社員に支給する給料を増やしたら、その金額に応じて法人税(個人事業主の場合は所得税)を安くする、という制度。

     

    制度の内容は細かく変わるけど、2021年4月時点だと、給料の支給額が前年度比で1.5%増えている場合に、法人税の控除が受けられる。

     

    控除額は、給料総額の前年度からの増加額の15%。また、給料の支給額が前年度比で2.5%増えるとともに、教育訓練費が前年度比で10%以上増加、もしくは中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けるなどした場合は、15%の控除が25%になる。

     

    増加額の15%は損金を算入できるのではなく、税額から直接控除できる。つまり、現金が戻ってくるのと同じ。これは大きいよね。

     

    ■税控除を受けるには、支給額「前年度比1.5%増」を確実にクリアすること

    重要なのは、1.5%(25%の控除を狙う場合は2.5%)という条件を確実にクリアしていること。少しでも下回ると控除額はゼロになる。それを避けるために、あらかじめ1.5(または2.5)%を超えるようシミュレーションしておく。

     

    もし、決算直前に計算し「1.4%だった」と気づいた場合はどうするか。

     

    その時は賞与で差額を調整する。足りない分を決算賞与として支給することで、社員は所得がさらに増え、会社は税額控除を受けることができる。

     

    ポイントは決算直前にシミュレーションをしておくこと。決算を経過してから1.4%だったと気づいても「時すでに遅し」だからね。

    子会社を作ったら、社長ではなく「非常勤役員」に就任

    分社化は会社を成長させていくために有効な手段の一つ。損金に算入できる接待交際費を増やしたり、法人税の節税につなげたりなど、さまざまなメリットがある。

     

    では、2つ目の会社(子会社)を作るとして、社長は誰が務めるか。

     

    「自分の会社だから自分が社長に」

     

    そう考える人は多いが、得策ではない。なぜなら、社長は常勤の役員で、役員報酬に社会保険料がかかるため。

     

    社会保険料は収入によって増える。本社と子会社の両方から報酬を受け取るようになると、報酬が増えた分だけ社会保険料負担も増える。

     

    また、社会保険料は会社と折半する。社会保険料の負担は、だいたい報酬の3割。つまり、会社が1割5分を負担することになる。

     

    社員の立場なら、会社が半分出してくれてうれしい。しかし、中小企業のオーナー社長は、会社も実質的には自分の物であり、会社のお金は自分のお金。

     

    自分が受け取る報酬から払うか会社から払うかの違いはあっても、どちらも自分のお金と考えると、削減できるなら削減したい。

     

    そこで、子会社は配偶者や親族などに社長を務めてもらう。自分は非常勤役員として経営に関わる。

     

    非常勤役員は社会保険に加入できないので、このような組織体制にすることで、自己負担と会社負担の社会保険料を削減しつつ、子会社を育てていくことができる!

     

    ただし、配偶者や親族が仕事をしている実態がなければ、それらに支払う役員報酬が否認されるので、必ず実態を作っておくことがポイントである。

    ドローン事業で「節税」と「運用」を両立

    資金繰り経営がうまくいき始めると手元に十分過ぎる資金が貯まる。ただ置いておくだけではもったいない。なにか事業に使いたい。そんな時はオペレーティングリースを検討してみたい。

     

    オペレーティングリースは、機械、装置、車などを貸し出すリース事業。リース会社を通じて商品を購入し、別の会社に貸すことによってリース料を得る。リースする商品は、大きなものでは飛行機や船などがある。

     

    「うちの事業と関連性がない」と言う人もいるけど、現金の運用方法の一つになり、商品の購入費が損金となるため、節税効果も見込める。

     

    オペレーティングリースは、かつては航空機リース(航空会社が借り手になる)が人気だった。しかし、コロナ禍で旅行需要が激減し、外国では航空会社が破綻した例も出ている。

     

    また、航空機リースに限らず、オペレーティングリースはリース期間が長い。商品の購入代(リース料による利益を含む)が10年後に一括で戻ってくる例も珍しくなく、運用効果は高いかもしれないが、その間の資金繰りが悪化する要因になる。

     

    一方で、最近は購入代金が短期で戻ってくる節税手法もある。

     

    例えば、ドローンのレンタル事業。ある会社のドローンレンタルを例にすると、まずはドローンを購入する(購入すると言っても書面だけで、手元には届かない)。ドローン1台は単価が9万円のため、消耗品として損金に算入でき、100台買っても1000台買っても固定資産にはならない。消耗品費としてその期の損金に算入できるため、利益が多い期の節税手段となる。

     

    そして購入と同時にドローンをレンタルする。レンタル期間は18ヵ月で、利益は投資額の5%。3ヵ月後から購入代金(レンタル料による5%の利益を含む)が18回の分割で戻ってくる。

     

    節税にもなり、投資額の回収も早く、かつキャッシュも増える節税商品である。

     

    節税を行っても資金繰りが悪くなったら本末転倒。手持ちの資金をなるべく減らさない節税手法としてドローンレンタルはおススメである。

     

     

    菅原 由一

    SMGグループ CEO

    SMG菅原経営株式会社 代表取締役

    SMG税理士事務所 代表税理士

     

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    ※本連載は、菅原由一氏の著書『激レア 資金繰りテクニック50』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

    激レア 資金繰りテクニック50

    激レア 資金繰りテクニック50

    菅原 由一

    幻冬舎メディアコンサルティング

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