(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢化が急速に進み、いまや世界に類をみない長寿国と呼ばれている日本。人生90年ともいわれ、第二、第三の人生を歩む人も少なくないなかで、健康問題は常にその計画を阻む障壁となります。特に深刻化しているのが「認知症の増加」で、日本が高齢化のピークを迎える2025年には、患者数は700万人を超えるという試算も…。認知症をひとごとにしてはいけません。ここでは、認知症にまつわる看過できない問題を見ていきましょう。認知症の専門医・旭俊臣医師が解説します。

認認介護が引き起こす「非常に危険な状況」

高齢のため運動機能に不安のあるケースが多いなかで、さらに認知症にかかっているとなれば、事故が起きやすいのは明白です。非常に危険な介護状況の一つといえるでしょう。

 

もともと、認知症は要介護状態を招く原因の上位に入っているため、高齢の要介護者には認知症も併発している人が多いという現状があります。そのような事情を考えれば、老老介護の多くが遅かれ早かれ認認介護状態になるといっても過言ではないでしょう。

 

認認介護でまず心配されるのは、食事や排泄など介護される側が必要とする最低限の世話をしたかどうか、認知症による記憶障害によって、介護者にも分からなくなってしまうことがあるということです。

 

認知症の症状として、食欲が低下するということもあり、介護者も介護される人も気づかないうちに、十分な食事を取らずいつのまにか低栄養状態に陥ってしまうことも考えられます。体力の衰えている高齢者にとって、低栄養状態はたいへん危険です。

 

また、水道光熱費などの住居まわりの支払いを忘れてしまうケースも多々みられます。そうなると電気やガスを止められ、水も出なくなり、ライフラインが途絶えてしまいます。

 

そのほか、火の不始末による出火や、金銭の管理が十分にできなくなることによるトラブルなど、心配事はつきません。

 

認知症がある程度進むと、認知症である介護者は自分が何をしているのか認識できなくなり、一方で介護される人はなぜ自分が介護されるのか理解できず、かたくなに介護を拒むケースも生じます。これも思わぬ事故や暴力事件などのトラブルにつながる可能性があります。

老老介護、認認介護の背景にあるもの

こうした老老介護、認認介護の背景には、核家族化が進んでいることや、第三者に助けを求めることへの抵抗感、経済的な問題などが挙げられます。

 

【核家族化】

独立して別居する子ども世帯の家庭が増えたことにより、核家族化が進みました。子ども世帯との住まいが近ければまだいいのですが、遠方に住んでいると何かあっても子どもに助けを求められず、高齢となった夫婦の間で老老介護をせざるを得なくなります。

 

認知症であることに気がつかないまま過ごし、金銭管理ができなくなって詐欺に巻き込まれていたということもあるかもしれません。

 

また、助けを求めるのが可能な距離であったとしても、子どもの世話になるのは情けないと考え、配偶者に介護されることを希望する人もいます。

 

【第三者に助けを求めることへの抵抗感】

現在、老老介護を行っている世代は戦争を経験しており、他人に助けを求めることに負い目を強く感じる傾向があります。忍耐を美徳とする世代といえるでしょう。「自分一人でも、なんとかがんばらなくては」と思ってしまうあまりに、他人をうまく頼ることができないのです。

 

一方、他人を家に入れることを強く警戒するがゆえに、第三者のサポートを受け入れないケースもあります。介護は入浴や排泄などの、非常にプライベートかつデリケートな領域にも関わるため、第三者がそこに立ち入ることに抵抗を示す人は少なくありません。

 

【経済的な理由】

「金銭に余裕がない」「生活保護を受給している」といったケースも、老老介護に陥りやすくなります。施設に入れるお金がないために、自宅で年金を受給しながら介護生活を送るしか選択肢がないのです。

 

自宅介護であっても、設備をそろえるためには費用が掛かりますし、訪問型の介護サービスを利用するにもお金が必要です。プロの助けを借りたくても、金銭的な理由からそれができない人は多く見られます。

次ページ認知症を「ひとごと」にしてはいけない

※本連載は、旭俊臣氏の著書『増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症

増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症

旭 俊臣

幻冬舎メディアコンサルティング

近年、日本では高齢化に伴って認知症患者が増えています。罹患を疑われる高齢者やその家族の間では進行防止や早期のケアに対する関心も高まっていますが、本人の自覚もなく、家族も気づいていない「隠れ認知症」についてはあま…

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