コロナ禍でも早期の「リハビリ再開」を
認知症の人に対するリハビリは心身の機能向上および生活の質改善にとって非常に重要ですが、残念ながらコロナ禍により施設側の実施が制限されたり、認知症の人も参加控えがあったりしてリハビリを受ける機会が減じています。そのために、認知機能や運動機能の低下傾向が当院ならびに当院のある千葉県松戸市小金原地区の地域包括支援センターの担当地域においてもみられています。
同地域内の認知症者の特徴としては主に次の5つが挙げられます。
〈①高齢化〉
千葉県松戸市は人口約49万の都市で、隣接する東京都と同様、高齢化が急激に進んでいます。
65歳以上の高齢者人口は、同市の高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画によると、2014年の11万4674人から2017年には12万2568人、2020年12月31日時点では12万8441人へと増加し、高齢化率も約25.8%へと上昇しています。
同市北東部に位置する小金原地区も例外ではなく、同地区内の認知症の人は85歳以上が多くを占めています。
〈②夫婦とも認知症のケースの増加〉
高齢の夫婦二人の所帯が多く、夫婦ともに認知症のケースが増えています。いわゆる認認介護の状態で、事故の危険性など多くの問題点をはらんでいます。
主だった問題としては、認知症による記憶障害や判断力・認識力の低下により、介護者も相手の食事や排せつそのほかの必要な世話をしたかどうかが分からなくなってしまうことが挙げられます。また認知症で食欲の低下が起こっても互いに気づかず、栄養失調状態に陥ることもあります。
〈③デイケアの中断によるBPSDの進行〉
認知症の諸症状のなかでも介護者の負担が大きいBPSD(周辺症状)は、人とのコミュニケーションをとることや生活のリズムを整えメリハリをつけることなどが緩和の役に立つとされていますが、デイケアの機会がなくなったことにより閉じこもり孤立が進み、BPSDが進行したケースが報告されています。
なお、当院でもコロナ禍のためデイケアの中断を余儀なくされており、それにより認知症の人の健康度が低下していることが確認されています。
〈④介護者の負担が増加〉
こちらは先の日本認知症学会等の報告にもあるとおり、新型コロナ感染予防に神経をすり減らしたり、デイケアなど外へ出ていく機会が激減したことなどで、介護者の負担が増えている傾向がこの地区でもみられています。高齢化が顕著で老老介護や認認介護が多いため、体力的、精神的な負担がますます増しているといえます。
〈⑤独居認知症の増加〉
統計はとっていないものの同地区は独居世帯も多く、親戚も遠方にいるなどで認知症になっていても気づかれにくいケースが目立ってきています。独居認知症は火の不始末や薬の飲み忘れ、金銭管理がうまくできない、食事がおろそかになることなどで起こる低栄養や、排せつトラブルなど多くの問題をはらんでいます。