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認知症増加で「社会的にも見過ごせない問題」が多発
認知症患者の数が増えるということは同時に、その介護者も増えるということを意味します。
認知症は現代の医療をもってしても、根治を目指せる治療法が確立されていないのはご存知のとおりです。そのなかで患者数が年々増加していくことは、それだけでも憂慮すべき問題ですが、同じように深刻なのは、患者の家族まで身体的、精神的、また経済的にも負担がのしかかってくるということです。
介護者が高齢の配偶者であれば、65歳以上の高齢者を同じく65歳以上の高齢者が介護している状態の「老老介護」や、老老介護のなかでも認知症の要介護者を認知症の介護者が介護している「認認介護」のリスクが高くなります。一方、介護者が働き盛り世代であれば、フルタイムで働けなくなるという問題が生じます。介護がなければほかの仕事ができる労働力が、失われてしまうというわけです。
少子化が深刻になっている昨今、労働人口が減ってしまうということは社会全体の生産性の低下に直結し、国全体に打撃を与えます。この状況が慢性化すれば社会が立ちいかなくなる恐れもあるでしょう。
さらに問題なのが、いわゆる“介護疲れ”です。認知症の介護は長期戦であり、終わりが見えないため、その状況に耐えられなくなると家族が精神的に追い詰められやすく、うつ病などの疾患の要因にもなりかねません。そうなるとますます労働力は見込めなくなりますし、そのうえ、そうした疾患の治療のために医療費が使われ、国の財政を圧迫するという負の連鎖が止まらなくなってしまう恐れがあります。