「老老介護」の次に待ち受ける「認認介護」
認知症の介護は「終わりが見えない」ことが最も介護者の心理的負担になっているのではないかと考えられます。認知症患者に同伴してくる人のなかにも、「介護はあとどのくらい続けなければならないのでしょう」と聞いてこられる人も少なからずいます。
見通しのつかない状況が長く続くということは、大変さがいつまで続くか分からないということです。医療が進歩している日本では、命を永らえることはできますが、一方で認知症の根治療法は確立されていないために、その人の長生きが介護者のつらい思いという犠牲のうえに成り立っているという状況になりかねないのです。
精神的な負担だけではありません。経済的な負担も家族を悩ませます。介護保険が適用されても、掛かる費用のいっさいがっさいをカバーできるわけではありません。今は何とかやっていても、介護が長期にわたり、もし年金や貯金が底をついてしまった場合にはどうしようと、不安な日々を過ごさなければならなくなります。これも大きな問題といえるでしょう。
高齢化による老老介護の増加老老介護には、「高齢の妻が高齢の夫を介護する」「65歳以上の子どもがさらに高齢の親を介護する」など、いくつかのケースがあります。
2013年に厚生労働省が行った国民生活基礎調査によると、在宅介護をしている世帯のうち、半数以上に当たる51.2%が、老老介護の状態にあるという報告があります。
施設に勤務するプロの介護士の代表的な職業病に「腰痛」が挙げられることをご存知の人は多いでしょう。あくまで要介護者の介護度にもよるものの、一般的には、高齢になるほど身体の自由が利かなくなり、介護者の肉体的な負担は増えていきます。
精神的な負担も見過ごせません。介護者のストレスが蓄積し、それが介護されている人にぶつけられ、虐待に至ってしまう恐れもあります。近年、そのような悲しい事件がたびたび報じられているのを見聞きしている人も多いでしょう。
老老介護の場合、こうした肉体的・精神的な限界が来て、介護者本人も第三者の助けがないと生活できなくなってしまう、いわゆる“共倒れ状態”になることも少なくありません。
助けを求められる状況ならまだ良いのですが、なかには周囲から孤立してしまう人もいます。強いストレスは認知症を引き起こす原因になり得るという研究結果もあり、周囲から孤立している老老介護ほど、次に述べる認認介護に陥りやすいといわれています。