(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症は、適切なケアを行えば症状を改善したり、進行を遅らせることが可能です。その方法として、病気の早期発見や適切な薬物療法とともに、近年では認知症に対するリハビリの重要性が認められつつあります。現状、認知症リハビリが最も盛んに行われているのはデイケア施設ですが、コロナ禍で通所が難しくなったり、患者本人が通所を嫌がったりする場合もあるでしょう。認知症の専門医・旭俊臣医師が、デイケア施設以外の日常生活で家族が気を付けるべきことなどを解説します。

進行を遅らせるために「家族ができること」とは?

■会話、散歩、家事などを「一緒にやる」

認知症の初期では、立つ、歩くといった身体活動は十分にできて、着替えや歯みがき、トイレといったADLもほぼ自立しています。しかし一方で、金銭管理や服薬、家事、買い物といった社会的な活動は少しずつ障害されていきます。同じものをいくつも買ってきてしまったり、小銭での支払いができなくなったりというのは、認知症の診断の際にも目安になる症状です。

 

こうした社会的な活動のことをIADLといいます。IADLが障害されていくに伴い、患者は外出意欲がなくなり、自宅内での活動量も減って、茫然と過ごすことが多くなってしまいます。

 

そのため、初期の段階はこのIADLの低下をできるだけ緩やかにすることに目的を置いたケアをするのが望ましいと考えています。私は介護者が患者本人とともに、家庭でIADLを一緒に行うことをすすめています。

 

一例を挙げれば、日記を書いたり、会話をしたり、散歩をしたりといったことです。高齢女性の場合、炊事、洗濯、掃除なども一緒にすることで意欲の向上がみられ、好んで身体を動かす人が多い傾向にあります。

 

このとき、できないことや嫌がることは避けて、実行可能なものを選んで一緒に行うことがポイントです。面白いと思ってもらい、やる気が出ることを一緒にやることで身体の活動量が増え、脳の活性化につながります。

 

例えば、天気が良いから庭に出て花の世話でもすると気持ちいいだろうと介護者は思ったとしても、本人は必ずしも同意するとは限りません。それまで庭仕事の経験があまりなければ気が乗らないかもしれませんし、天気が良いからといっても外へ出たくないときもあるでしょう。それを無理に押し付けようとするとかえってストレスが溜まり、認知症の症状が悪化する恐れがあります。

 

■「日記の活用」で短期記憶の低下を防ぐ

私は患者とその家族には特に、日記の活用をおすすめしています。長い文章やまとまった文章を書く必要はなく、生活のなかでふと目に留まったもの、気になったことを箇条書きでもいいので書いておくのです。メモ程度に新聞の見出しやテレビニュースのタイトル、テロップなどを書き留めておくだけでも構いません。

 

そして、それを寝る前に読み合わせします。今日はこんなことがあったね、など一日の振り返りを日記を見ながらするのです。そうすることで、認知症に特徴的な短期記憶の低下を抑えることが可能です。短期記憶は睡眠中に定着しやすいことが分かっているからです。

 

音楽や絵、手芸などの、発症前に好んで行っていた趣味などを一緒にするのもよいでしょう。興味をもって、集中して取り組めそうなことを選ぶのがポイントです。

 

また患者本人がそうしたいと思うことが前提ですが、子どもやペットとの交流も認知機能の賦活化には有用です。

 

余談ですが、昨今ペット型のロボットが一般家庭にも広まってきており、一人暮らしの高齢者の癒しになっているとメディアで取り上げられることも増えてきました。過去にイヌやネコなどのペットを飼ったことがある人は特に、ロボットであっても親密なコミュニケーションをとろうとする傾向があるようです。

次ページリハビリの早期開始で進行を遅らせられるが…

※本連載は、旭俊臣氏による『増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症

増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症

旭 俊臣

幻冬舎メディアコンサルティング

近年、日本では高齢化に伴って認知症患者が増えています。罹患を疑われる高齢者やその家族の間では進行防止や早期のケアに対する関心も高まっていますが、本人の自覚もなく、家族も気づいていない「隠れ認知症」についてはあま…

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