(※写真はイメージです/PIXTA)

米国地域保健協会(NRHA)は、「地方の医療従事者と患者が直面する障害は、都市部とは大きく異なる。経済的な要因、文化的・社会的な違い、教育不足、政治家の認識不足、遠隔地に住むという孤独、これらすべてが医療格差を生み、地方のアメリカ人が普通に健康な生活を送るための努力を妨げる」と指摘します。中には、医療が絶望的な状況に陥っている地域も…。ボストン在住の大西睦子医師が、米国の都市圏と農村地域とで拡大している「医療格差」について解説します。

医師が一人もいない群も…農村地域が直面する障害

米国地域保健協会(NRHA)は、「地方の医療従事者と患者が直面する障害は、都市部とは大きく異なる。経済的な要因、文化的・社会的な違い、教育不足、政治家の認識不足、遠隔地に住むという孤独、これらすべてが医療格差を生み、地方のアメリカ人が普通に健康な生活を送るための努力を妨げる」と指摘します(※4)

 

たとえば、農村地域の住民は貧しい傾向にあります。一人当たりの平均所得は、米国の一人当たりの平均所得より9,242ドル低く、農村地域の米国人は貧困レベル以下で生活する可能性が高い。所得格差は、農村地域に住むマイノリティーとってはさらに大きく、農村地域の子どもたちの約25%が貧困状態にあります。農村地域の53%は、連邦通信委員会が定めるインターネット速度の基準である3Mbps〜25Mbpsの帯域幅にアクセスできません。高速インターネットにアクセスできないと、情報へのアクセスに支障をきたします。

 

また、12歳以上の農村地域の若者は、タバコを吸う傾向が強く(大都市圏の19%に対して26.6%)、無煙タバコの使用率も、農村地域では6.7%、大都市部では2.1%とはるかに高まります。農村地域では、自動車の走行距離の3分の1以下にもかかわらず、自動車事故関連死の50%以上は農村地域で起こっています。糖尿病や冠状動脈性心疾患の発生頻度が高い傾向にあります。メンタルヘルスの専門家は慢性的に不足していて、受診に対する偏見なども、ケアへの障壁となっています。農村地域の若者は、自殺する確率が2倍高まります。

 

また、農村地域は失業率が高く、保険未加入の住民が多く、医療機関に行くための交通手段が不便です。

 

そして、医師不足が問題になっています。

 

2020年の米国医科大学協会(AAMC)ニュースに、オレゴン州ウィーラー郡(面積1,717平方マイル〔1マイル=約1.61km〕に人口〔1,354人〕)の地域医療センターを経営するジョイ・アンダーソンさんは「この郡には医者が一人もいないんだ。精神科医もいない。月に2回、医師が半日ほど出向いてくれるけど、深刻な緊急事態や難しい出産、化学療法が必要な場合、患者は最寄りの病院で医師の診察を受けるために70マイル(約113キロ)も移動しなければならず、さらに遠くなることもしばしばあるよ」と語ります(※5)

 

※4 https://www.ruralhealth.us/about-nrha/about-rural-health-care

※5 https://www.aamc.org/news-insights/attracting-next-generation-physicians-rural-medicine

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