理念はとうやって浸透させればいいか
20年ほど前にジェームズ・コリンズらにより「ビジョナリー・カンパニー」という本が出され、時代を超えて繁栄を続ける会社の共通点は、基本理念を大切にしているということだという研究結果が示されました。
これは、理念の大切さを物語るものですが、日本の企業では、企業理念を大切にしている会社とそうでない会社とが見受けられます。多いのは、理念というと、額やホームページに掲げられているけれども社員からは忘れられているケースです。
その原因は、日本社会は基本的に人治主義であり、トップの意向に従うことを良しとしていて、グランド・ルールのようなものを軽視する傾向があるからです。その時その時で見ると、一番偉い人の言う事を聞いていればいいわけです。
ただし、そうすると、その時々の経営者の考え方によって経営方針が左右にぶれるので、長い目で見ると方向性が定まらず、会社が衰退する可能性があるということです。特に、実力経営者が、会長職にとどまり、自分の言うことを聞く人を社長に据えるようなことをすると人治主義の傾向が一層強まり、さらに自己保身に走ると、やがて会社が傾くわけです。
このため、経営上の基本的な考え方を定め、その考え方に則って経営や組織運営を行う必要があり、そのためには、理念の浸透を図る必要があります。
理念の浸透度合いには、レベル1.知っているから、レベル2.意味を理解している、レベル3.イメージが浮かぶ、レベル4.共感するまでありますが、通常行われているような、理念をカードにして配布する、理念の言葉に説明を加える、定期的に唱和するといった方法では、レベル2.意味を理解しているまでしか上がりません。
レベル3.イメージが湧く、さらに本来望ましい、レベル4.共感する、または共感した行動を取るようになるには、別の施策が必要です。
それを実際に行っているのが、京セラや稲盛和夫さんが入って立て直しをしたJAL等です。JALでは、京セラフィロソフィーをもとにJALフィロソフィーを作り、定期的に社員を集め、理念研修行っています。この理念研修の際に行われているが、社員の理念のキーワードに基づいた行いや体験を語り合うということです。
理念の言葉は、「お客様第一義」とか、「信用第一」等一見抽象的な表現が多いため、社員の人たちには、それがどのような時にどのような考え方をし、どのような行動をとることが良いことなのかが理解できません。
ですから、自分たちなりに「お客様第一義」とはこういうことを言うのではなのかとか、「信用第一」とはこのような行動を指すのではないのか等、実際の思考と行動に当てはめて考えてもらうと良いわけです。
こうした活動は、国内での理念の浸透に役立つだけでなく、海外のローコンテキスト社会においてはさらに有効です。海外の人たちは、もともと日本とは異なる文化を前提としているわけですから、日本の会社の価値観を伝えようとしたら、日本以上の取り組みが必要になるわけです。合わせて、日本の取り組みで出て来たエピソードなどを海外で紹介することも有効でしょう。海外で出て来たものを国内に逆輸入することもありえます。
理念は、それを体現した話を語り合い浸透させる
井口 嘉則
株式会社ユニバーサル・ワイ・ネット 代表取締役
オフィス井口 代表
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