(画像はイメージです/PIXTA)

家族で経営してきた不動産賃貸関連の株式会社は、いずれ父親から長男に承継される予定でした。しかし、父親と長男が経営方針をめぐって対立してしまいます。その後、父親が亡くなると、遺言書には長男が思ってもいなかった記述がありました。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

株主が「株式を買い取ってもらえるケース」は限定的

株式会社において、株主が株式を買い取ってもらえるケースは、合併や営業譲渡に反対する場合や、第三者に株式を売却しようとして反対された場合などに限定されており、一般的に、株主から株式を買い取ってもらう権利はありません。

 

しかも、上場している会社の株式であれば株式市場で売却できますが、上場していない会社の株式は、経営権を握れる過半数の株式であれば買い取ってくれる第三者も見つけられる可能性はありますが、半数より少ない株式を買い取ってくれる第三者はいないと考えられます。

 

したがって、40%の株式を会社か花子さんに買い取ってもらえるとする選択肢③も誤りとなります。

経営権を失い、取締役にもなれず、株も売却できず…

以上のことから、太郎さんには厳しいようですが、太一さんが花子さんに遺言書を書いてしまったことにより、会社の経営権は失い、取締役にも選任される可能性はなくなり、40%の株式は会社にも花子さんにも買い取ってもらえないという、選択肢④が正解となります。

 

最初に書きましたとおり、会社の相続は、株式の過半数を取得することが重要となります。会社が上場していない場合、半数を下回る株式は、たとえ49%持っていてもなんの役にも立ちません。

 

会社を承継しようとしたら、株式の生前贈与を受けるか、遺言書を書いてもらうかして、株式の過半数を確保しないと安心はできません。

 

現在社長であっても、株式の過半数を握られてしまえば、解任されてしまう可能性もありますし、任期満了で再任されない可能性もあります。

 

会社の承継を考えている人は、生前に準備をしておく必要があります。

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士

 

 

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