(画像はイメージです/PIXTA)

家族で経営してきた不動産賃貸関連の株式会社は、いずれ父親から長男に承継される予定でした。しかし、父親と長男が経営方針をめぐって対立してしまいます。その後、父親が亡くなると、遺言書には長男が思ってもいなかった記述がありました。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

「会社自体」「会社の資産」は相続対象に該当しない

両親が会社を経営しているという方も少なくないでしょう。とくに、貸しビル業等不動産の賃貸業を行う場合、家族を役員にしたり、会社名義で資産を購入したりして節税を行いやすいことから、会社で不動産賃貸業を行っている場合が多いと思います。

 

さて、個人名義で不動産賃貸業を行っている場合、貸しビルや賃貸マンションが遺産となるので、相続関係はわかりやすいです。

 

会社で行っているとなると、会社が相続の対象となるのか、それとも会社が持っている貸しビルや貸しマンションが相続の対象となるのか、ちょっと迷ってしまうかもしれません。

 

会社の相続は、会社そのものや会社が持っている資産が相続の対象となるわけではありません。会社の株式が相続の対象となります。

 

本件でいうと、太一さんの持っている会社の株式60%が相続の対象となるのです。

 

そして、会社の取締役の選任等会社の意思決定は株主総会の過半数の決議で決められます。

 

したがって、会社の相続の場合、相続により会社の過半数の株式を取得した人、すなわち50%を越える株式を取得した人が会社の経営権を握ることとなるのです。

 

本件では、花子さんに会社の株式を含むすべての遺産を相続させるという遺言があります。

 

したがって、本件では遺言が無効で無い限り、太一さんが持っていた会社の60%の株式は、すべて花子さんのものとなります。

 

よって、太郎さんは、法定相続分が2分の1あるので、会社の株式を30%相続できるとする選択肢①は誤りです。

 

では、太郎さんが遺留分を請求することでなんとかならないでしょうか?

 

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