(画像はイメージです/PIXTA)

家族で経営してきた不動産賃貸関連の株式会社は、いずれ父親から長男に承継される予定でした。しかし、父親と長男が経営方針をめぐって対立してしまいます。その後、父親が亡くなると、遺言書には長男が思ってもいなかった記述がありました。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

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「会社の株式を含むすべての遺産を長女に相続させる」

太一さんは貸しビルを複数所有している会社の会長です。長男の太郎さんが社長、長女の花子さんはただの取締役です。

 

会社の株式は、父親の太一さんが60%、太郎さんが40%を持っています。太郎さんが持っている株式は、太郎さんが社長になり会社の跡を継ぐ予定だったことから、母親の陽子さんが亡くなったときの遺産分割で、陽子さんが持っていた会社の株を全部太郎さんが相続したものです。

 

しかし、陽子さんが亡くなったあとのここ1年くらいは、太郎さんは会社の経営方針を巡って父親の太一さんと意見が対立し、父親の太一さんは会社に出てこなくなりました。太郎さんは太一さんが自分の意見をわかってくれたのかと思っていました。

 

高齢の太一さんは、体の具合が悪くなったと思ったら、2ヵ月くらいであっという間に亡くなってしまいました。

 

四十九日が過ぎて、太郎さんは妹の花子さんと、遺産分割協議をしようとしたところ、花子さんは、太一さんが作成した「会社の株式を含むすべての遺産を花子に相続させる」という公正証書遺言を出してきたのです。公正証書遺言は、1年前くらいに太郎さんが太一さんと意見が対立して会社に出てこなくなった頃に作成されており、その当時太一さんはまだ元気でした。

 

太郎さんはどうしたらいいでしょうか。

 

①太郎さんは法定相続分が2分の1あるので、会社の株式を30%相続できるため、合計70%を持つことになるから心配ない。

 

②太郎さんは遺留分が4分の1あるので、会社の株式を15%相続できるため、合計55%を持つことになるから心配ない。

 

③民法が改正され、遺留分で株式を取得することはできなくなったことから、太郎さんは陽子さんから相続した40%の株式しかないけれども、これを会社か花子さんに買い取ってもらうことができる。

 

④太郎さんは、遺留分により株式を相続することはできないので40%の株式を持っているだけで、役員に選任される可能性もなく、株式を買い取ってもらうこともできず、遺留分に相当する金銭を請求するほかない。

 

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