(画像はイメージです/PIXTA)

資産家の父が保有していた賃貸マンションは、月額300万円、年間3600万円もの賃料が入ります。相続人であるきょうだいは、まだ遺産分割協議をすませていません。では、所有者が決定する前の賃料は、一体だれのものになるのでしょうか。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

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遺産分割前の「不動産の賃料収入」は相続財産か?

太一さんは、貸しマンション1棟を持っており、月額賃料で300万円の収入がある資産家です。

 

太一さんには、長男の太郎さん、長女の花子さんがおり、妻の陽子さんはすでに亡くなっています。花子さんは結婚して家を出ましたが、太郎さんは太一さんと同居し、不動産の管理も太郎さんが行っていました。

 

太一さんが亡くなり、四十九日も過ぎたことから、花子さんはそろそろ遺産分割協議をしたいと思っていますが、兄の太郎さんは、太一さんの財産を独り占めしようとしています。花子さんは、遺言はないと聞いていることから、弁護士に依頼して徹底的に争い、時間や費用がかかっても、太郎さんが太一さんの生前に使い込んだお金も含め、自分の相続分を確保しようと考えています。

 

そこで、花子さんが気になるのは、太一さんが亡くなったあとに毎月発生している、月額300万円、年間3600万円の賃料収入です。この賃料収入は、遺産として分割されるのでしょうか。

 

①太一さんが亡くなった後遺産分割成立までの賃料は遺産ではないので、花子さんは取得できない。

 

②太一さんが亡くなった後遺産分割成立までの賃料は、貸しマンションを相続した人が、太一さんが亡くなった時点に遡って取得することとなる。

 

③太一さんが亡くなった後遺産分割成立までの賃料は遺産ではなく、賃料発生時点で、法定相続分に従い、各相続人が取得することとなる。

 

遺産のなかには、賃貸マンション、賃貸アパート、駐車場など、賃料を発生させるものがあります。遺産分割が揉めに揉め、何年もかかるケースもあります。そうなると、遺産分割が解決するまでに発生した賃料は誰が取得することとなるのかということが問題となってきます。

 

本件のように、年間3600万円の賃料ともなると、遺産分割が解決するまでに1年だとしても3600万円、3年かかると1億円を超えることになってしまうので、これを誰が取得することとなるかは、関心を持って当然のこととなります。

 

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