(※写真はイメージです/PIXTA)

独身の叔父の病状が思わしくなく、近い将来相続が発生しそうな状況です。相続人は叔母2人、相談者、相談者の妹の合計4人。すると叔母たちから、叔父の商売を受け継ぎたいから相続放棄をしてほしいとの依頼が…。妹が二つ返事で了承したことから、相談者は孤立状態です。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

相続放棄できない「切迫した事情」

「妹はあっさり相続放棄に同意しましたが、私はしたくありません。ですが、このような孤立状態では、やはりむずかしいのでしょうか?」

 

深刻な表情を浮かべる石井さんに筆者は、石井さんはれっきとした相続人であり、相続できないといった事態にはならないと伝えました。

 

「そうですか。安心しました…。しかし、実は事情がありまして…」

 

石井さんはそう前置きすると、ご自分の置かれた状況を話しはじめました。

 

「私は新卒で入社した会社で夫と出会い、結婚退職しました。ですが、夫の親族と折り合いが悪く、離婚することになりまして…。その後は実家に戻ったのですが、両親が相次いで倒れたため、長年にわたって介護に追われ、両親の財産も底をつきました」

 

「両親を見送ったあと、就職活動をしたのですが、ブランクが長すぎてスキルが足りず、うまくいきません。いまはアルバイトを掛け持ちしてしのいでいます。介護で足腰を痛めてしまい、比較的求人のある、体を使う仕事や介護関係もむずかしいのです」

 

「数年前からパートナーのアパートで同居していますが、別れた奥さんのところにむずかしい年齢の子どもが2人いて…。子どもへの影響を考え、入籍はまだ先になりそうです」

 

周囲に心配をかけたくないと、自分の置かれた状況を伝えることは避けてきたものの、やはり自分の将来に不安があり、承継できる資産があるなら承継したいということでした。

相続放棄の必要なし…事情を伝えて再度話し合いを

筆者は、叔母たちともう一度、率直に話し合いをしてみるよう提案しました。叔母たちと話し合って希望を伝え、合意できれば丸く収まります。

 

石井さんは胸の内を話したことで気持ちが和らいだのか、「もう一度連絡を取ってみます」といって事務所をあとにしました。

 

石井さんはれっきとした相続人であり、権利を主張することに問題はありません。法定割合である1/6を目安に、相続したいと希望を出すべきでしょう。

 

今回の相談とは違う話になりますが、パートナーの方とも入籍をするか、もしくは遺言を残してもらうようにアドバイスを付け加えました。現在はパートナーに生活を頼っていますが、もしお相手に万一の事態があったとき、同居人の立場では相続権がありません。お相手にはお子さんがいるとのことですから、資産はすべてお子さんが相続することになってしまいます。

 

自分の生活を守るのであれば、取れる対策を抜かりなく取っておくことが大切だといえるでしょう。

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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