お客様への声のかけ方も、電話の受け答えも、商品の陳列も、袋詰めも、何も決まりがありません。自分がやってもらったら嬉しいことをお客様にもするという文化があるだけです。なぜ料理道具専門店の飯田屋には接客マニュアルがないのでしょうか。飯田屋店主が著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)でその理由を明かします。

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再び台湾のお客が飯田屋にやってきた!

■接客マニュアルなんていらいない

 

飯田屋には接客マニュアルがありません。

 

お客様への声のかけ方も、電話の受け答えも、商品の陳列も、袋詰めも、何も決まりがありません。自分がやってもらったら嬉しいことをお客様にもするという文化があるだけです。マニュアルで縛りつけるのではなく、一人ひとりのお客様に心地よく感じてもらえるベストな対応を常に考え実践していきたいからです。

 

マニュアルに基づいた指導をすれば、わかりやすく平均的なサービスはできます。しかし、一律のサービスでは嫌な思いもしなければ、大きな感動も生まれません。

 

飯田屋が目指すのは、思わず白い歯がこぼれるほどの笑顔が生まれる接客です。それは「ここまでやるの!?」と、想定外の対応を提供できたときに生まれます。マニュアルがあったら絶対にあり得ない接客です。

 

杉山研二は、台湾からいらしたお客様のために、離れた郵便局まで台車に荷物を載せて運び、配送をサポートしたことがありました。たいへん喜んでくださり、接客を受けている様子を写真に撮ってくださいました。

 

それから2年後、飯田屋で歓声が上がります。そのお客様が当時の杉山がにこやかに接客している写真を持って、再び杉山に会いに台湾から来てくれたのです。その写真を誇らしそうに僕らに見せ、いかに自分が杉山からいい接客を受けたか話してくれました。マニュアルどおりの接客だったら、きっとなかったエピソードでしょう。

 

ある会社ではマニュアルで、電話対応は何分以内までと決められていると聞きました。

 

また、別の会社では、接客は何分以内に終わらせるというマニュアルがあるそうです。まったくナンセンスです。「目の前のお客様を大切にする」と決めたとき、マニュアルという店都合の教本は必要なくなります。

 

飯田屋にいらっしゃるお客様は、初回は「飯田屋」の名前を頼りにご来店くださいます。それが2回目以降は、「△△さんに会いにきた」とおっしゃる方が少なくありません。

 

それは、マニュアルに沿った一律の接客ではなく、個性を感じられる接客で白い歯がこぼれるほどニコッとしてしまうような体験をされたからでしょう。それこそ飯田屋が目指す接客です。

 

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※本連載は飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

効率度外視の「売らない」経営が廃業寸前の老舗を人気店に変えた。 ノルマなし。売上目標なし。営業方針はまさかの「売るな」──型破りの経営で店舗の売上は急拡大、ECサイトもアマゾンをしのぐ販売数を達成。 廃業の危機に…

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