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POSシステムは過去の数字しか教えてくれない
■POSシステムよりお客様の声
2016年の冬、POSシステムを導入しました。
いつ、どんな商品が、どんなお客様に売れたのかを簡単に集計・管理・分析できるようになり、収集データを分析して仕入れに反映しました。これで、より業務効率が向上し、売上が伸びると考えたのです。
しかし、思ったような成果は上がりませんでした。
多くの業界には繁忙期と閑散期があり、年間行事や季節とひもづく購買サイクルが存在します。しかし、料理道具の場合、メディア露出が大きな影響を及ぼします。目の前のお客様がこの時期にこの商品を購入したのは、テレビの影響なのか、雑誌を見たのか、ブームが到来しているのか、芸能人がすすめていたのかといった流動的な情報が必要です。
そのため、POSシステムが導き出すデータ分析はあまり向いていません。また、POSシステムは過去の数字は教えてくれますが、未来の情報を導き出すことはできません。
とても便利に思えた自動発注機能の使用もやめました。
自動発注機能は仕入先の情報を知らないままに、発注できます。それが問題でした。お取引先とは、しっかりと信頼関係を築いていきたいからです。手間はかかりますが、発注書などは手書きで書くので、商品と仕入先が一致するようになりますし、こまめな電話やFAXは相手を知るきっかけにもなります。
システムに頼れば仕事は楽になりますが、コミュニケーションの機会も減り、数字だけの関係になってしまいます。
日々のコミュニケーションがあれば、お客様から質問があったときも、どのメーカーから仕入れているのか、担当者は誰なのかが一瞬で頭に浮かびます。機械的に効率を上げなくとも、密なコミュニケーションが生み出す効果もあるのです。
また、僕がもっとも重要視しているお客様との接点が二つあります。
一つ目は、レジ打ち作業です。お客様の声をもっともよく聞くことができるのがクロージングのレジ打ち作業だからです。
「なぜその商品のご購入を決めたのですか?」「どんなことに使うのですか?」など、可能な限り聞くようにしています。買う決め手となった理由は宝物のような情報です。
二つ目は、注文品の梱包作業です。一緒に購入されやすい商品の組み合わせが一目でわかります。POSでも確認できますが、文字の羅列より現物なら一目瞭然です。
梱包の際、ご購入への感謝の気持ちを伝えるために、「最高のフライパンのお買い上げありがとうございます。弱火で焼くとおいしいですよ!」など、段ボール箱の耳の部分に手書きのメッセージを残すようにしています。
これは仕組みではなく、僕が好きで始めたことです。しかし、従業員も真似してくれるようになりました。
レジ打ち作業も梱包作業も、「雑務」といわれることの多い仕事です。しかし、雑務と決めるのは人の心です。雑な心でやった仕事は雑用となりますが、心を込めてやった雑用は立派な仕事になるのです。
電話応対も大切です。本当は店にかかってきた電話を誰よりも早くとりたいのですが、最近は従業員のスピードも上がってきて争奪戦となっています。
結局は、非効率的に思えていた手作業の数々が小さな店ではもっとも効果的なのかもしれません。どれも、お客様の飯田屋への印象を左右する大切な仕事です。
なんでもかんでもシステムに頼らずに、お客様との接点を大事にしたいと考えています。