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一方、日本の「認知症ケア」は…
日本ではまだまだ、病院や、施設然とした建物の中で、決まった時間以外は部屋から出られず、大半はベッドの上で過ごすというのが認知症ケアの標準的なスタイルです。
万一の事故や入所者同士のトラブルがあったらたいへん、と常に目の届く範囲に入所者がいるようにし、1日の過ごし方を施設が決め、管理をするのが当たり前になっているように思います。
入所者は「お世話をする人」「保護する人」という考え方で、スタッフとの関係性がつくられたり、施設の運営がなされたりしているともいえます。
欧米と比べ薬物療法偏重で管理主義的な傾向が強く、ホグウェイからは学ぶべきものが多いと痛感しています。
また、海外ではコリンエステラーゼ阻害薬の副作用による患者への不利益が問題視され、できるだけ使わないようにという流れになってきています。
と同時に、薬物そのものに頼らない非薬物療法に目が向けられています。薬を使わずに、脳を活性化して、残っている認知機能や生活能力を維持するという考え方です。
世界ではすでに、非薬物療法が主体となっており、薬物療法は補助的なものへとシフトしつつあるのです。
非薬物療法にも音楽療法、回想法、園芸療法などさまざまなものがありますが、一つのアプローチとして「生活のなかで本人の出番をつくる」ことがあり、自立を促すのに効果的といえます。家庭内や地域で本人の役割をつくると言い換えてもいいと思います。
認知症が進行して、日常生活でうまくできないことや失敗が多くなると、家族は「それはやらなくていいよ」「じっとしていて」などと言って、本人の家庭内での役割や出番を徐々に減らしていきたがります。しかし、本人にとっては、何もすることがなくなればただ呆然としているしかなく、認知機能の低下を進めてしまうことになります。
また、「何もしないでもよい」状況は精神的にもつらいものです。感情のやり場を失った挙句、突然爆発するなどで、BPSD(認知症状に伴い起こる暴言や暴行、徘徊、うつ状態、妄想等の行動・心理症状)が強く出てしまう恐れもあります。