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チームパフォーマンスを高める「心理的安全性」とは?
■Google社曰く、生産性の高いチームの共通点は「心理的安全性の高さ」
心理的安全性とは、チーム内で自分の意見や考えを偽りなく伝えられると感じる度合いです。「偽りなく」の部分が最も重要です。
特にメンバー支援行動(自分以外のメンバーの仕事がより良くなるために、出し惜しみせずに自ら支援や提案をすること)やチーム運営向上行動(チームの運営や活動をより良くするための行動)に影響を与えることが分かっています。心理的に安全だと感じられなければ、行動は委縮してしまいます。
心理的安全性はハーバードビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授が提唱した概念です。Google社が2015年に「生産性の高いチームに共通しているのは心理的安全性の高さだった」と発表したことで一気に世界中に知れ渡りました。
■「心理的安全性が高いチーム」の実態
心理的安全性と聞くとホンワカした和気あいあいとした仲良しチームを想像するかもしれません。しかしそれは誤解です。誰も意見に反対しないとか、提案が簡単に通ったりするという意味ではありません。逆にみんなが率直に意見を言い合うことから、厳しい雰囲気になることもあります。
例えばあなたがチーム最年長だとします。心理的安全性があるということは、あなたの意見を新入社員がチーム全員の前で論破する可能性もあるということです。和気あいあいどころか居心地が悪い思いをする人もいるはずです。論破するほうだって気持ちがいいとは限りません。後味の悪い気持ちになる人もいます。
心理的安全性の高いチームを別のイメージでとらえるなら、プロスポーツは良い例です。例えばサッカーは瞬間の判断と行動が要求されるスポーツです。試合中は年下の選手が年上の選手を平気で呼び捨てにし、「橋本、パス寄越せ!」「もっと早く仕掛けろ!」などと強く要求しているシーンを目にします。「あの人は先輩だから、パスをくれるまで待っていよう」などと思っていたら、試合に出場させてもらえなくなります。仕事の現場で呼び捨てはまずいと思いますが、率直な意見を交わすことはとても大事です。
とはいえ自由に意見が言えるといっても、好き勝手を言えばいいわけではありませんし、わがままを言うのも違います。提案が必ず取り上げられると思ったら勘違いですし、むしろ考えが浅いと問題になります。
考え方や意見が違っていても、偽りなく率直に発言できるということが、心理的安全性の本質です。そのために重要なことは、人格攻撃を許さないこと、誰が言ったかを問題にしない、特に立場(役職など)で意見の軽重を判断しないことです。最低限、これらを満たさないと心理的安全性は生まれません。
人間性を重視し過ぎることも心理的安全性の阻害要素になり得ます。「あの人は頑張ってくれているから」「すごく性格がいいから」「面倒見がいいから」などの理由で発言を尊重するのはよくありません。「ちょっといけすかない」「頭がいいのは自分だけと思っているのではないか」というような人の意見も平等に扱わなければならないのです。
心理的安全性が高いことの最大のメリットは、チームの生産性が高まることです。Google社もこのことを強調していました。立場にかかわらず誰もが自分の意見や考えを発言し、理解できなければ遠慮なく質問したり真意を尋ねたりしています。また自分一人ではまとめきれない提案やアイデアについては、誰かに意見やアドバイスを求めることもできます。
もう一つ、事故やトラブルの回避力が高まるというメリットがあります。懸念があったり、問題を把握したりしていれば、積極的に進言できるからです。