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「目的の共有」が「常にチャレンジするチーム」を作る
問題解決が難しくなった現代、個人にもチームにも常にチャレンジが求められています。そのためにリーダーはチーム、しかも常にチャレンジするチームを作っていかなければなりません。
そして、手段ではなく目的の共有に力を注ぐことが重要です。このようなマネジメントにはいくつかポイントがあります。
●あらゆる取り組みに目的や意義を設定すること
●メンバーと目的・意義を共有し、ともに練り上げていくこと
●常にメンバーに、目的・意義を問い、確認し、意識させること
●目的を基準に判断すること
これらをしつこく、諦めずに本気で続けていくことです。
リーダーに「あなたのチームの目的は何ですか?」と問うと「一人ひとりがイキイキと」「お客様に価値のある仕事を」「みんながやりがいをもって」「メンバー同士が協力し合って」などと答える人が多いです。しかし、重要なのは言葉ではなく実践です。その実践を強化するのは、チームとしてのありたい姿や取り組むことの目的・意義を自分の言葉での継続的な発信です。毎日メンバーに発信してもよいくらいです。発信し続けることでそのことが脳に記憶され、その記憶が強化されていきます。
結局のところ目的・意義や方針といったことは、メンバーを方向付ける以上にリーダー自身の行動を律する作用があるのです。これが不十分だといわゆる言行不一致が起こります。メンバーはリーダーの言葉のブレに敏感です。「顧客のためにと言ったくせに、会社の利益を優先した」と思われたら最後、リーダーが「顧客のために」と言うたびにメンバーはしらけていきやがて不信感をもつようになります。
そもそも人間は結果が分からないことに不安を感じるものです。例えば初めて見たものを何でも食べるような人間ばかりだったとしたら、人類はとっくに滅んでいたと思います。チャレンジは本来不安で苦しいことですし、本当にこんなことに意味があるのかと自問自答するのもおかしなことではありません。
だからこそ意義と目的の設定が重要なのです。
何をするかではなく、何を実現するかにコミットする習慣もリーダーが身につけておくべき思考スキルの一つです。何をするかに集中してしまうと、それがうまくいっていないと不安になったり、逆にうまくいっていないのにそのやり方に固執してしまったりします。
何を実現するかにコミットし、意義と目的が明確になっていれば、やり方は自由ですし、臨機応変な対応が可能です。うまくいっていなければやり方を変えればいいのです。
それこそチャレンジです。メンバーからは「うちのリーダーは朝令暮改。やり方がころころ変わる」と言われそうで不安をもつかもしれませんが「このやり方だと成果が出ない。成果を出し、目的を実現するために思い切ってやり方を変えたいから協力してほしい」と伝えればいいのです。実現すべきこと、その目的と意義が明確であれば、メンバーもやり方を変える必要性を理解し、ともにチャレンジしてくれるはずです。
ですから本当に「これだ!」と思える目的と意義を設定し、それに基づいて一貫した判断や行動をとることが大事なのです。そしてメンバーと目的と意義の共有に力を注ぐのです。目的と意義が共有されていくことで、たとえ困難があっても試行錯誤し、より良いやり方を主体的に考え、成果の実現に向けてチャレンジし続けるチームへと進化していくのです。
「失敗」はすべてリーダーの責任だが…
チャレンジするチームは失敗の多いチームだと言い換えることができます。失敗に失敗を積み重ねて、つまり試行錯誤しながら目標の達成を目指します。
また会社には年度というものがあり、半期、四半期という単位で業績を問われます。もっと細かく月や週といった単位で成果を出すことを求められる会社もあります。毎期・毎月大成功というのは今ではかなり難しいことです。
だからといってチャレンジをやめるわけにはいきません。チャレンジはもはやチームという水槽における酸素のようなもので、それなしではメンバーは生き残れない――そんな時代になりつつあるのです。
では、誰が責任を取るのかというと当然リーダーです。結果の責任はリーダーにあります。リーダーが考えた解決策を部下に指示して、それで失敗したのなら明らかにリーダーの責任ですが、チーム全員で考えた計画で失敗しても責任を取るのはリーダーというのは理不尽なことのようにも思えます。
しかしリーダーには特権があるのです。それは自分の理想のチーム、自分が目指す目的を叶えられるチームを創り出せるという特権です。だからこそその特権を本気で行使してほしいと私は思います。
本気になったリーダーが科学的なエビデンスに基づく方法論を駆使して、メンバーの力を結集することができれば、成功の確率は上がるはずです。
目的や意義を大切にするマネジメントはZ世代に“響く”
これからの時代のチームマネジメントにはこれから会社を担っていく中心となるZ世代への対応が欠かせません。
Z世代とは日本ではおおよそ1995年〜2009年ぐらいに生まれた人たちを指します。生まれた頃にはインターネットが普及していて、子どもの頃からスマートフォンをもっていた世代です。ネットで買い物をすることやキャッシュレス決済にほとんど抵抗がありません。これからのデジタルトランスフォーメーション(DX)時代を担っていく世代として期待されています。
Z世代は学生時代からボランティアに取り組む人も多くいます。社会的貢献に積極的で、そのような行為を当たり前と考えています。そこに意義を感じるからです。目的や意義をそれ以前の世代よりも大切にしている世代でもあるといえます。
したがって目的や意義を大切にするマネジメントは、Z世代に響きやすいものだと私は考えます。さらにこうした傾向はZ世代以降も続くと思われます。若い人と話が通じず、マネジメントが難しいというベテランにとっても、チーム力を意識したマネジメントは大いに参考になるはずです。
橋本 竜也
株式会社日本経営 取締役
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