(※写真はイメージです/PIXTA)

医師が不動産投資に取り組むメリットは、単に家賃収入を得られるだけではありません。不動産投資の活用は、地域医療にいっそうの貢献が期待できる「新しいキャリア選択肢」になり得ます。現役医師による実際の活用例とともに、「医師ならではの不動産投資」を考えていきましょう。

高齢者の住居を軸に医療と介護をつなぐモデルを検討中

中江さんがもう一つ、新たな挑戦として見据えているのが、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の経営です。

 

中江さんには、亡父から相続した土地があり、その有効活用を以前から考えていました。訪問診療に関わるようになると、一人暮らしで自宅にいるよりむしろサ高住のような施設に入ったほうが本人も安心、医療や介護のサービス提供者にとっても効率的というケースが多いことに気づきました。

 

「地域包括ケアシステムでも、高齢者の住まいをどうとらえるかは重要なポイント。高齢者の住まいを軸に、医療と介護をつなぐモデルをつくり上げられないか、いろいろな人に相談しながら検討しているところです。」

 

医師による不動産投資にはさまざまなスタイルがあり、サ高住の経営は医師ならではの特色あるパターンといえるでしょう。

不動産投資による「節税効果」も見逃せないメリット

不動産投資のメリットの一つは、節税効果が得られるということです。特に、収入の高い医師の方たちにとっては見逃せない点です。

 

アパートやマンションなど賃貸用不動産の賃料は、所得税においては「不動産所得」に分類されます。1年間の不動産所得を次のように計算し、他の所得と合わせて所得税が決まります。

 

【不動産所得の金額=総収入金額(賃料等)-必要経費】

 

ここでのポイントは、必要経費の内訳です。不動産所得においては、次のようなものが必要経費となります。

 

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①管理費

不動産を日常的に管理するための費用です。1棟アパートや1棟マンションなどの場合、廊下や階段の清掃、設備の保守点検などの費用が挙げられます。区分マンションでは、あらかじめ決められた金額を毎月、管理組合に支払うことになっています。

 

②修繕費

建物や設備の定期的な修繕のほか、突発的な故障や不具合などの補修に掛かる費用です。1棟アパートや1棟マンションでは実際に支出した際に必要経費として計上できますが、まとまった金額になることもあるので、あらかじめ賃料から積み立てておくべきです。区分マンションでは、あらかじめ決められた金額を修繕積立金として毎月、管理組合に支払うことになっており、必要経費として計上できます。

 

③ローンの利息

賃貸用不動産を、融資(ローン)を利用して購入している場合、毎月の返済額のうち利息分は金融機関に支払う必要経費として計上できます(元金分は本来は自己資金でまかなうべきものであり、必要経費にはなりません)。

 

④税金

不動産を購入した際の印紙税や不動産取得税、毎年支払う固定資産税・都市計画税などが必要経費となります。

 

⑤減価償却費

不動産投資における特徴的な必要経費です。建物や設備などの購入費用(土地は除く)は必要経費になるのですが、購入した年に一括して計上するのではなく、税法上定められた耐用年数を基に、複数年にわたって分割して経費計上できます。この減価償却費が、不動産投資における節税効果を生むことになります。

 

⑥損害保険料

自然災害による損害に備えるための火災保険や地震保険などの保険料は、必要経費として計上できます。

 

⑦その他の費用

現地調査や打ち合わせなどのための旅費交通費、不動産投資に関係する書籍や新聞の購入費、運営管理に関わる通信費、確定申告を税理士に依頼した費用なども、必要経費となります。

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賃貸用不動産を購入したことによる節税効果は、先に挙げた必要経費のうち⑤減価償却費が大きな役割を果たします。

 

賃貸用不動産を購入した年は本来、建物や設備などの購入費用が必要経費になるはずです(土地は除く)。しかし、税法上、建物や設備はその法定耐用年数に応じて、複数年にわたって経費計上することになっています。

 

そのため、賃貸用不動産を購入した年は、実際に支払った必要経費よりも不動産所得の計算上の必要経費は少なくなります(手元からはキャッシュアウト)。

 

しかし、2年目以降は、実際に支払っていない減価償却費が必要経費として計上できるので、不動産所得の金額は実際のキャッシュフローより圧縮され、赤字(マイナス)になることもあります。

 

そして、この赤字分は給与所得などと相殺することが可能です。これを「損益通算」といって、所得税や住民税の負担が減ることになります。

 

ただし、このスキームには一定の注意が必要です。

 

不動産所得が赤字の場合、土地の取得にかかる融資の利息分は、他の所得との損益通算の対象にはならないという規定があります。

 

つまり、不動産所得が赤字になった場合、土地部分の金利を必要経費として計上することはできますが、損益通算の対象となるのは赤字部分から土地の借入金の金利に該当する額を差し引いた金額になります。

 

土地に関する融資の利息分は基本的に、建物を取得するために借りた分と土地を取得するために借りた分を区別し、借入金に対する土地の割合を算出します。この区分が難しい場合、自己資金は優先的に土地の取得に充て、融資は土地の残金と建物の取得に充てたと考えます。

 

こうした点は複雑ですので、不動産投資に詳しいコンサルタントに相談されることをお勧めします。

 

 

 

大山 一也

トライブホールディングス 代表取締役社長

 

植田 幸

資産コンサルタント、宅地建物取引士、AFP(日本FP協力認定)

 

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※本連載は、大山一也氏、植田幸氏による共著『幸せになれる女性医師の不動産投資』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

幸せになれる女性医師の不動産投資

幸せになれる女性医師の不動産投資

大山 一也
植田 幸

幻冬舎メディアコンサルティング

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