【関連記事】孤独死した兄のマンション、転がり込んだ弟まで…相続登記の放置が招いた「解決困難な問題」
養子縁組した養父の逝去で、米国の妻の存在が判明?
相談内容
横浜市在住の80代の父親が亡くなり、相続が発生しました。正確にいうと、この父親は養父であり、私の実父の弟、つまり叔父にあたります。養父は未婚で実子がないため、法定相続人は養子縁組をした私1人だと思われます。
ところが先日、突然弁護士から「妻からの遺留分請求について」と書かれた書面が届きました。
養父は若いころ米国に居住していたことがあり、どうやらそのときに結婚したようなのですが、50年以上も前に別居しており、結婚していたとはいえないのではないかと思います。また、養父の日本の戸籍にも、結婚に関する内容の記載はありませんでした。
このような請求は有効なのでしょうか?
外国籍の方が関係する婚姻は、日本以外の法律の縛りも
回 答
日本人同士が日本で結婚する場合は、日本の法律にのみに従います。しかし、外国籍の方が関係する結婚の場合は、すべて日本の法律だけというわけではありません。
外国籍の方が関係する結婚では、下記のようなパターンが考えられます。
①日本人と外国人が日本で結婚する
②日本人と外国人が外国で結婚する
③外国人同士が日本で結婚する
外国籍の方が関係する場合は、どちらの法律に基づくべきなのかという議論が発生します。
法務省HP:国際結婚,海外での出生等に関する戸籍Q&A (moj.go.jp)
詳細は上記の法務省のHPにもありますが、日本の国際法には「結婚の成立については各当事者の本国法による」とあります。よって、婚姻する男女それぞれの国籍の法律を使うという解釈ができるでしょう。
しかしながら、アメリカ、ロシア、中国などの法律では「婚姻挙行地の法律による」とあります。その点から、養父が米国にいた際に婚姻していたとするならば、米国法での婚姻が成立している可能性が高いといえます。
日本の役所に戸籍の届を出していなければ、おそらく養父の戸籍に反映されることもなかったのではないでしょうか。
他方、アメリカにおいては、日本のように双方の意思の合致のみで成立する協議離婚などは存在せず、すべての州で裁判所への離婚申請をする必要があるようです。アメリカでは、すべての州において、相手に落ち度(浮気や家庭内暴力など)がなくても離婚を請求できるため、このような制度があるのでしょう。
つまり、養父が生前、本件のような離婚の手続きを取っていない場合は、米国方式での婚姻関係は継続していたといわざるを得ず、遺留分請求についても、根拠あるものとなっている可能性が高いといえます。
近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士
【関連記事】
税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
年収600万円「家賃20万円タワマン暮らし」の36歳男性…住まいに関する「2つの悩み」
夫婦合わせて収入「月48万円」だが…日本人の「平均的な暮らしぶり」の厳しい現実
恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ
親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】