マネタリーベース:実勢としては、小幅な増加基調が継続
1月5日に発表された昨年12月のマネタリーベースによると、日銀による資金供給量(日銀当座預金+市中に流通する紙幣・貨幣)を示すマネタリーベース(平残)の伸び率は前年比8.3%と、前月(同9.3%)を下回り、8カ月連続で低下した(図表5)。
低下の主因は引き続きマネタリーベースの約7割を占める日銀当座預金の伸び率低下(前月10.9%→当月9.7%)である。日銀当座預金の減少要因となる政府による国庫短期証券発行額が前年同月よりも大幅に縮小する一方で、日銀による資金供給も国庫短期証券買入れを中心に、国債・ETF・社債買入れなどで幅広く縮小されていることから、増加ペースが鈍化している(図表6・7)。なお、コロナオペと同月から開始した気候変動対応オペは日銀当座預金の増勢に寄与した。
その他の内訳では、貨幣流通高の伸び率が前年比0.4%(前月は同0.7%)と2カ月ぶりに低下する一方、日銀券発行高の伸びは前年比3.1%(前月も同じ)と横ばいで推移している(図表5)。
12月末時点のマネタリーベース残高は670兆円と前月末比で9.6兆円増加した。もともと年末にかけては日銀当座預金が増加しやすいという季節性があるものの、季節性や月内の動きを除外した季節調整済み系列(平残)でみても、前月比5.3兆円増と5カ月ぶりの増加幅となっている(図表8)。実勢としては、マネタリーベースの小幅な増加基調が継続している。
マネタリーベースの先行きについては、日銀がETFや国債の買入れを抑制するなど市場への関与を徐々に減らしているうえ、今後もしばらく比較対象となる昨年同月の伸び率上昇が続くことから、前年比伸び率の低下基調が続くと見込まれる。少々先では、コロナオペの一部打ち切りなど資金供給策の縮小が実施される今年4月以降にはさらに低下圧力がかかり、前年割れとなる可能性もある。