米雇用統計(21年12月)…雇用者数(前月比)は市場予想を大幅に下回ったものの、全般的には労働需給の逼迫を示す結果

米雇用統計(21年12月)…雇用者数(前月比)は市場予想を大幅に下回ったものの、全般的には労働需給の逼迫を示す結果
(写真はイメージです/PIXTA)

本記事では、ニッセイ基礎研究所の窪谷浩氏が2021年12月の米雇用統計を分析し、雇用者数や失業率、事業所調査や家計調査についてみていきます。 ※本記事は、ニッセイ基礎研究所の米雇用統計に関するレポートを転載したものです。

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    結果の概要:雇用者数は前月、市場予想を下回った一方、失業率は市場予想を上回る改善

    1月7日、米国労働省(BLS)は12月の雇用統計を発表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+19.9万人の増加(前月改定値:+24.9万人)と、+21.0万人から上方修正された前月を下回ったほか、市場予想の+45.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大幅に下回った(後掲図表2参照)。

    ※ 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。

     

    失業率は3.9%(前月:4.2%、市場予想:4.1%)と、こちらは前月から▲0.3%ポイント低下し、市場予想を上回る改善を示した(後掲図表6参照)。労働参加率は61.9%(前月改定値:61.9%、市場予想:61.9%)と61.8%から上方修正された前月、市場予想に一致した(後掲図表5参照)。

    ※ 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

    結果の評価:雇用増加ペースは鈍化も、失業率、賃金動向は労働需給の逼迫を示唆

    事業所調査では、12月の非農業部門雇用者数の対前月比増加数が年初来で最低となったほか、年初来の月間平均増加数の+53.7万人を大幅に下回るなど、雇用増加ペースが鈍化したことを示した。もっとも、後述するように過去2ヵ月分が合計で+14.1万人の大幅な上方修正がされているため、12月の雇用鈍化は数値が示すほど悪い結果ではない。

     

    一方、家計調査は、労働参加率が小数第一位まででは前月から横這いとなったものの、就業者数が前月比+65.1万人と堅調な伸びを伴って失業率が低下したことから、前月に続き労働需給の逼迫を示した。

     

    [図表1]時間当たり賃金の伸び率
    [図表1]時間当たり賃金の伸び率

     

    時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比が+0.6%(前月改定値:+0.4%、市場予想:+0.4%)と、21年4月(+0.7%)以来の伸びとなり、+0.3%から小幅上方修正された前月、市場予想を上回った。

     

    前年同月比は+4.7%(前月改訂値:+5.1%、市場予想:+4.2%)と、+4.8%から上方修正された前月を下回ったものの、市場予想を上回った(図表1)。前月比で賃金上昇ペースが大幅に加速したことは労働需給が逼迫していることを示す結果と言えよう。

     

    このようにみると、12月は雇用増加ペースが前月から鈍化したものの、過去2ヵ月分が大幅に上方修正された影響を受けたとみられることや、失業率の低下や賃金上昇の加速などから、全般的には労働需給が引き続き逼迫していることを示す結果と言えよう。

     

    もっとも、12月の結果はオミクロン株の感染が急拡大した12月中旬以降の雇用環境を反映していない。このため、来月発表される1月の雇用統計でどの程度オミクロン株の影響がでるか注目される。

     

    次ページ事業所調査の詳細:娯楽・宿泊業の伸びが加速も、全般的に伸びは鈍化

    本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年1月11日に公開したレポートを転載したものです。

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