(※写真はイメージです/PIXTA)

世界中で海運の玄関である港の競争力が競われるようになり、日本でもビジネスチャンスが広がっています。港の施設そのものの運営は、民間が行うことで高い効率や収益性を追求することが可能になってきました。今後、日本はどのように港湾ビジネスを拡大すべきでしょうか、渡瀬裕哉氏が著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)で明らかにします。

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活況を呈する海運業界で問題提起されたこと

■世界経済との結節点、港湾運営の民営化が未来を拓く

 

空港とならんで、世界からの人や物が日本に入る玄関口となるのが港湾です。食物の輸出入工業製品を製造するための原材料輸入など、多くの物資の移動は海運に依存しています。原材料の調達から製造、販売、消費までの一連の流れはサプライチェーンと呼ばれますが、その大元の調達部分と製品の輸出を支える重要な産業が海運業です。

 

海運の動向は、経済的な指標のひとつでもあります。今、この瞬間にも世界中の海で多くの船が物資を運んでいます。一国の領域の中で貨物輸送を行う船を内航船、国際航海を行う船を外航船と言い、外航船は大きく2つに分かれます。特定の航路で港間をつなぐ定期船と、積み荷の都合で発着地や寄港地の決まる不定期船です。

 

不定期船のうち、生鮮品や原油・石油製品、LNG(液化天然ガス)などを運ぶ特別な船を除き、大多数を占めるのが穀物や資源を運ぶ船で、こうした船の船賃は荷動きや気象条件によって変動します。そこで、その変動状況が世界経済の動向を知るための参考となる先行指標とされているのです。

 

英ロンドンのバルチック海運取引所が発表している不定期船運賃の総合指数「Baltic Dry Index(BDI:バルチック海運指数)」の動きは、世界経済の動向に2か月先行するとも言われています。株価との連動性も高く、2015年から2016年にかけてバルチック海運指数が過去最低を更新したときは、世界同時株安が起こっていました。逆に、運ぶものがどんどん増えて指数が上がっていくと、世界で交易が活発になり、景気が上向きになってきていることが伺えます。

 

2019年からの新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は海運の動向にも一部影響しましたが、2021年に入ってからは回復を見せ、6月には11年ぶりの高値を記録する活況を呈しています。

 

こうした海運を支えるのは、世界中の船乗りの人たちです。国際連合の専門機関、IMO(国際海事機関)は、毎年6月25日を「船員の日(Day of the Seafarer)」に制定しています。世界中の船乗りたちが、国際的な海上交易や世界経済、市民社会に貢献していることを認識しようという日です。2021年6月25日は、特にIMOやインターカーゴ(国際乾貨物船主協会)の声明で船員の交代問題が提起されました。

 

コロナ禍で各国政府が対応に苦慮する中、世界の海を渡航する船員たちは、政府の施策によって港での上陸や交代ができず長期間の海上生活を余儀なくされながら、一般の人たちの生活に欠かせない食糧や燃料、医薬品の輸送を行ってきたからです。

 

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※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

渡瀬 裕哉

ワニブックス

現在の日本の政治や経済のムードを変えていくにはどうしたらよいのでしょうか。 タックスペイヤー(納税者)やリスクを取って挑戦する人を大事にする政治を作っていくことが求められているといいいます。 本書には「世の中に…

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