(※写真はイメージです/PIXTA)

世界中で海運の玄関である港の競争力が競われるようになり、日本でもビジネスチャンスが広がっています。港の施設そのものの運営は、民間が行うことで高い効率や収益性を追求することが可能になってきました。今後、日本はどのように港湾ビジネスを拡大すべきでしょうか、渡瀬裕哉氏が著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)で明らかにします。

日本で唯一のコンセッション方式の博多港

船乗りの人たちの帰る場所が港です。港町というと荒っぽいイメージもありますが、最近は事情が変わってきています。世界中で港の競争力が競われるようになり、日本でもビジネスチャンスが広がっているのです。

 

港の機能には、船が安全に停泊して貨物の積み下ろしを行うこと、燃料や水を補給すること、船員の交代や休息を行うことのほか、貨物が他の地域に向けて配送される運送集積地としての役割があります。近年では外国からのクルーズ船の発着にともない、出入国管理や観光拠点としての機能も注目されています。多様な受け入れに対応できる能力の高い港には、人・モノ・金・情報が集まります。これを活用しない手はありません。

 

人やモノの移動の終着点や起点となるだけでなく、港を経由してさらに他の国や地域に広がっていく中継地点となる港は「国際ハブ港湾」と呼ばれます。アジア圏では香港やシンガポール、釜山の需要が高く、多くの航路が交わる港となっています。コンテナの取り扱い数ランキングでは、上海や深圳、寧波など中国の港が軒並み上位を占め、トップ10位に入っているのはドバイくらいです。日本は京浜東京港、横浜港が辛うじて50位以内に入り、次いで名古屋港となっています。

 

港湾の整備には、喫水の深い大型船の接岸と停泊を可能とするなど、莫大な設備投資が必要です。一方で、港の施設そのものの運営は、民間が行うことで高い効率や収益性を追求することが可能になりました。空の玄関口である空港と同様のコンセッション方式です。

 

現在、日本の港湾で唯一コンセッション方式を採用しているのは、福岡市の博多港です。空路で福岡を訪れる際、着陸アプローチで博多湾が一望できます。沿岸部には鎌倉時代の元寇の遺跡が数多く残されている景勝地でもあり、日本と外国との関わりを最前線で担ってきた歴史を持つ場所でもあります。

 

福岡市のウォーターフロント開発計画は、現在まで物流よりも観光を主な目的として構想されています。クルーズ船の発着と出入国管理、国際会議や展示会などのビジネスイベントを行える公共施設(MICE)の設置を主軸に、こうした施設の運営を民間委託することによって港を観光資源として位置付ける方向性を強化しています。福岡空港との距離の近さから、航空便とクルーズ旅行を組み合わせたフライト&クルーズも視野に、10年計画で現在も開発が進められています。

 

博多港は、日本の中でも東アジアの各国に近いという地の利があります。近年、博多港へのクルーズ船の寄港は右肩上がりで増加しています。平成25年(2013)に38件だった寄港は、以後の5年で300件を超えるようになりました。施設容量といったハード面の不足から寄港や国際会議開催を断ることも多く、年間500億円の損失があると報告されています。コロナ禍以前、船を使った人の交流とその需要は、大きく進んできました。アフター・コロナでは再び大いに期待できる投資分野です。

 

空港も同様ですが、日本は港湾のような国際競争力のある大規模なインフラの整備をもっと進める必要があります。政府の財源だけで莫大な予算を割くことは難しいですから、民間が大きく投資して、運営で利益を上げていくことが重要です。その過程で蓄積されたノウハウは、最終的に企業の国際競争力につながっていきます。

 

福岡で始まっている港湾ターミナルやMICEの管理の民間委託は、大規模インフラの運営ノウハウ蓄積の第一歩です。施設運営で商業的な利益を生み出せるようにしたり、利用者の使い勝手を良くして満足度の高いサービスを提供することは、港湾が備えている基本的な機能に大きな付加価値を与えることになります。

 

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※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

渡瀬 裕哉

ワニブックス

現在の日本の政治や経済のムードを変えていくにはどうしたらよいのでしょうか。 タックスペイヤー(納税者)やリスクを取って挑戦する人を大事にする政治を作っていくことが求められているといいいます。 本書には「世の中に…

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