足元のインフレ率上昇の背景として、昨年の物価下落の反動、石油など商品価格の上昇など様々な要因が指摘されています。サプライチェーンの混乱で海上コストの大幅上昇も注目される要因です。先月末に公表された経済協力開発機構(OECD)の世界経済見通しの分析などを参考に、物価への影響を振り返ります。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

「相続税の税務調査」に 選ばれる人 選ばれない人
>>1月16日(木)開催・WEBセミナー

OECD経済予想:世界経済成長率を上方修正するも、インフレ率の動向を注視

経済協力開発機構(OECD)は2021年5月31日に世界経済見通しを公表、21年の世界経済成長率予想を5.6%から5.8%に上方修正しました。OECDは各国政府の政策支援が貿易や製造業、個人消費の回復を下支えしたことが上方修正の背景と説明しました。ただ、ワクチンの確保などで新興国・低所得国の支援に失敗すれば、格差問題が悪化するとも指摘しています。

 

なお、OECDは供給逼迫(ひっぱく)などを背景にした新たなインフレリスクにも警戒感を示しました(図表1参照)。生産能力の正常化などを背景に、現在のインフレ懸念は短期的に収まる可能性を指摘する一方で、中長期的なインフレ率の動向には不確実性が残るとも指摘しています。

 

日次、期間:2020年1月月初~2021年6月2日、指数は1985年=1000 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]バルチック海運指数の推移 日次、期間:2020年1月月初~2021年6月2日、指数は1985年=1000
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:海上運賃、輸入物価、インフレ率、CPI

足元のインフレ率上昇の背景として、昨年の物価下落の反動、石油など商品価格の上昇など様々な要因が指摘されています。サプライチェーンの混乱で海上コストの大幅上昇も注目される要因です。先月末に公表されたOECDの世界経済見通しの分析などを参考に、物価への影響を振り返ります。

 

ロンドンのバルチック海運取引所が発表する外航不定期船の運賃指数であるバルチック海運指数など、世界の海運指数が昨年後半頃から上昇しています(図表1参照)。国際貿易航路12種の運賃を反映するフレイトス・バルチック・コンテナ指数のように、この1年で3倍以上となったものも見られます。

 

海上運賃が上昇した背景として、OECDは世界的、特にアジアで耐久消費財を中心に需要が急拡大し貿易が活発化したことをあげています。新型コロナウイルスの対策を受け港湾や海上輸送は動きが中断したこと、また、今年3月にはスエズ運河でコンテナ船が座礁したことによる影響も指摘しています。

 

次に、海上運賃の物価への影響として、OECDの分析をイメージとして示します(図表2参照)。前提として今年前半海上運賃が50%上昇し、年後半同水準で年末迄高止まりするとしています。その場合、まず輸入物価を1年にわたって2~2.5%程度押し上げると見込んでいます。

 

四半期、1から12は四半期後を示し、4は1年後に該当 出所:OECDのデータを参考にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]海運コストの上昇によるインフレ率への影響イメージ 四半期、1から12は四半期後を示し、4は1年後に該当
出所:OECDのデータを参考にピクテ投信投資顧問作成

 

輸入物価の上昇に伴い、消費者物価指数(CPI)が押し上げられる様子をイメージしたのが図表2です。CPIは1年ほど上昇を続け0.2%程度押し上げられると推定しています。

 

海上運賃などの上昇のCPIや他のインフレ指標への影響は中央銀行も分析しています。欧州中央銀行はこの春に、そして米国ではカンザスシティー連邦準備銀行が数年前に同様の分析を行いました。結果に大きな相違はなく、5割程度の上昇であれば、消費者物価への影響は小幅となっています。

 

しかし、インフレに対して警戒が必要です。まず、短期的には海上運賃の中には、想定より大幅に上昇しているものも見られるからです。そして大切なのはこの分析は海上運賃の影響を抽出したに過ぎないことです。物価を押し上げる要因は様々で他の長期物価上昇要因に注意が必要です。OECDはインフレについて、サプライチェーンや、昨年の下落の反動など一過性(1から2年と長そうですが)の懸念で終わる可能性を指摘しつつも、中長期のインフレ動向は不確実性が高く、バイアスとしてインフレ率上昇懸念が高いと指摘しています。今後も物価動向に注視が必要と見ています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『海上運賃上昇のインフレ率への影響』を参照)。

 

(2021年6月3日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

日本経済の行方、米国株式市場、新NISA、オルタナティブ投資…
圧倒的知識で各専門家が解説!カメハメハ倶楽部の資産運用セミナー

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【1/7開催】<令和7年度>
税制改正大綱を徹底解説
最新情報から見る資産運用への影響と対策

 

【1/8開催】オルカン、S&P500…
「新NISA」の最適な投資対象とは
金融資産1億円以上の方だからできる活用法

 

【1/9開催】2025年の幕開け、どうなる?日本株
長いデフレ環境を生き抜いたスパークスが考える
魅力的な企業への「長期集中投資」

 

【1/9開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【1/12開催】相続税の
「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?
【見逃し配信special】

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧