入居者の囲い込みをするためだった「サ高住」
■サービス付き高齢者向け住宅とは?
実は、今となっては、何のために存在しているのかまったく理解ができないものが、「サービス付き高齢者向け住宅」というものです。
前記の流れで言うと、住宅型よりも、もっと元気なアクティブ高齢者のための住宅が、「サービス付き高齢者向け住宅」になります。
しかし、世の中の多くのサービス付き高齢者向け住宅は、住宅型老人ホームや、介護付き老人ホームなどの代替品として発展してきました。また、この「商品」が登場し始めたころは、特養ホームの運営会社が、特養ホームの待機場所として、開設していたことを思い出します。いわゆる、入居者の囲い込みをするための「商品」でした。
したがって、サービス付き高齢者向け住宅とは何ですか? と問われれば、私には、「老人ホームと同じです」としか回答できません。これが運営から見た事実です。
なお、これらのわけがわからない進化の根幹にあるのは、言わずと知れた介護保険報酬というお金です。要介護高齢者の面倒を見れば、介護保険報酬というお金を得ることができるので、とにかくターゲットは、ただの高齢者ではなく、要介護高齢者でなければならない、
さらに言うと、要介護1の高齢者よりも要介護5の高齢者のほうが、介護保険報酬が多く貰えるので、より重度な要介護高齢者をターゲットにしたほうが、経営がスムーズで安定する、という事情があります。
さらに、要介護高齢者、特に重度な要介護高齢者は、困っている人、というカテゴリーに入るので、困っている人を相手にしたほうが、仕事がしやすいという事情もあります。
なお、この理屈で言うと、困っていない元気で経済的に豊かな高齢者の扱いは難しいがゆえに、元気な高齢者をターゲットにした住宅型老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、健全な発展を遂とげることができなかった、ということになります。これらの理由で、高齢者施設を運営する事業者の多くは、介護保険事業者になったということです。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役