(※写真はイメージです/PIXTA)

融資を受ける最大のチャンスは「創業前」です。ただし、金融機関の融資に対する本音は、「貸したら返してくれる人に貸したい」というものです。その「返してくれるのか」の基準は、自己資金と経験値、そして信用情報。ここでは創業融資の審査の決め手となる「自己資金」と「経験値」について、注意するべきポイントを見ていきましょう。

自己資金が足りなければ「現金以外の資産」を探す

コツコツと貯めたお金もなければ、配偶者の通帳もアテにできない。しかし、キャリア(経験値)はあるので、なんとか融資を受けたい。

 

そんな方を私の会社でサポートする際に実践するのが、“余剰財産”探しです。

 

余剰財産とは、現金以外の資産を指します。例えば解約返戻金付き保険に入っていれば、解約返戻金の額が余剰財産として見てもらえます。金融資産があればそれも該当します。

 

余剰財産があれば、万が一業績が悪くなっても、その財産を切り崩してしばらくは営業し続け、お金を返してくれるだろう!という判断をしてもらえることから、余剰財産があればあるだけ融資を受けやすくなります。

いくら額が多くても、こんな“見せ金”はNG

一方、通帳にいくら相応の金額があったとしても、認められない自己資金があります。つまり“正しくない自己資金”です。

 

その代表が通称「見せ金」です。見せ金とは、相手を信用させるために、文字どおり“見せる(ためだけの)お金”を意味します。

 

例えば、今は資本金1円から設立可能な株式会社も、以前は資本金1000万円を用意する必要がありました。1000万円といえば、そう簡単には貯められない額です。

 

そこで、十分な資金が用意できない場合、一時的に第三者機関、カードローン会社などから借入をして資本金として見せるという手法が使われた時代がありました。表面上、資本金を満たす資金力があると法務局を信用させる方法ですが、これは場合によっては違法となります。

 

この方法を、融資を受ける際に使うのです。一時的にカードローンや他人から借金をしてお金を振り込み、その通帳を提示し自己資金があるように見せるやり方です。これは犯罪ではありませんが、まず十中八九、ウソは見破られるので注意が必要です。

 

なぜ“見せ金”は、バレてしまうのでしょうか。

 

“見せ金”と疑われる典型的なケースが、通帳に毎月定額収入ではなく、一時的に高額な収入があった場合です。

 

例えば、過去1年以上、無収入なのに、通帳の口座にいきなり数百万円の入金があったらどうでしょうか。

 

もちろん、いきなり何百万円単位の大金が通帳に振込まれても、本人名義の株や保険を解約した一時金として判断されれば問題はありません。「相続で得たお金」ならば、証明書類などを一緒に提出すればOKです。審査では、申込者本人の個人通帳(会社で借りる場合は法人口座の通帳)だけでなく融資を申込んだ年からさかのぼり、2年前までの確定申告書または源泉徴収票も提出します。

 

しかし、他人名義やカードローン会社の名義で融資の審査の直前に、通帳にお金が振込まれている場合、あるいは証明書類がないお金の場合、必ず面談で「このお金はどういうお金ですか?」と尋ねられることになります。

 

口からデマカセで「宝くじに当たった」「自宅に貯めておいたタンス預金を振込みました」などと主張するような方もいますが、口座にまったく貯金がない方が、自宅に数百万円の現金があるというのも、不自然な話です。

 

実際、私のお客さまでもコツコツと500円玉預金で、自己資金を貯めた方がいらっしゃいました。このケースでは貯金を銀行に預け入れて通帳記入することで、自己資金として認められましたが、こうしたタンス預金も場合によっては“見せ金”と判断されてしまうリスクもあります。

次ページ振込人が「個人名義」の場合も要注意

※本連載は、田原広一氏の著書『賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

増補改訂版 独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣

増補改訂版 独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣

田原 広一

幻冬舎メディアコンサルティング

資金調達のノウハウが知りたい経営者、必読!  起業の喜びも束の間、会社の存続をかけ資金繰りに頭を悩ます日々…。創業から1年以内に約3割の企業が廃業するといわれているなか、生き残るために必要な融資の知識とその活用…

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