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ガソリン価格の高騰が続いています。一般庶民にとってつらい状況ですが、ガソリンを販売しているガソリンスタンドにとっても大変な痛手です。売上数量が減少すれば、利益も大幅に減少するからです。そこで思い浮かぶのは、客を招くための「ガソリンの安売り」ですが、各スタンドが価格競争を繰り広げ、庶民の懐が多少でも温かくなる展開は考えられるのでしょうか。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

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    ガソリンスタンドも、ガソリン価格高騰に苦しんでいる

    ガソリン価格が高止まりしています。庶民の生活を直撃する事態で困っている人も多いでしょうが、じつはガソリンスタンドも困っているのかもしれません。なぜなら、値段が上がると売上数量が減るからです。ガソリンスタンドの費用のなかには、固定費が含まれていますから、売上数量が減少すると利益が大幅に減ってしまうのです。

     

    たとえば固定費が1万円、売値が100円、仕入値が50円だとすると、売上ゼロだと1万円の赤字ですが、1リットル売るごとに50円ずつ赤字が減って行き、200リットル売った時点で赤字が消えるわけです。ちなみに売値マイナス仕入値の50円のことを粗利(または売上総利益)と呼びます。

     

    そんなとき、売上数量が210リットルから200リットルに5%減っただけで利益がゼロになってしまい、199リットルにまで減ると赤字に転落してしまうのです。

    スタンドの値下げ競争は「仕入値+1円」まで続く!?

    そんな事態に陥るくらいなら、値下げをしてライバルから客を奪ってくるほうがマシかもしれません。90円に値下げをすると、1リットルあたりの粗利は50円から40円に減りますが、それによって売上数量が250リットル以上になれば、利益はむしろ増えることになります。

     

    ガソリンは、どこのガソリンスタンドで入れても品質的にはおおむね同じでしょうから、少しでも値段の安いほうで給油したいという客が多いでしょう。つまり、少しでも値下げをすればライバルから多くの客を奪って来れるので、ガソリンスタンドとしては値下げするインセンティブが大きいわけです。

     

    問題は、ライバルも同じ事を考える可能性があるということです。お互いに儲かっているときには無用な値下げ合戦で消耗したくない、といった「阿吽(あうん)の呼吸」が奏功する場合も多いのでしょうが、赤字に転落するとそうはいっていられない、ということかもしれませんね。

     

    もうひとつの問題は、両社が値下げをしても、両社合計の売上数量はあまり増えそうもない、ということです。牛丼チェーン同士の値下げ競争であれば、ラーメン店から客を奪って来るので両社合計の売上数量が増えると期待されるわけですが、ガソリンスタンドの値下げ合戦による売上数量増は、牛丼チェーンの場合よりも少ないでしょうから。

     

    そうなると、値下げ合戦は無限に続くかもしれません。こちらが1円下げれば相手は2円下げ、こちらが対抗して3円下げれば相手は4円下げ、といったことが繰り返されるかもしれないからです。

     

    仮に、1円でも安いほうに客が全員来るとしましょう。相手が53円で当社が52円だと、相手は固定費分だけ全額赤字ですが、当社の赤字は固定費よりも売上数量の2円分だけ赤字が少なくなります。つまり、54円から52円に値下げをするインセンティブが当社にはあるのです。

     

    しかし、相手にはさらに51円に値下げをするインセンティブがありますから、値下げをするでしょう。そうなると、当社には50円に値下げをするインセンティブはありません(利益がゼロになってしまう)から、51円で客の半分を獲得しようとします。つまり、値下げ競争は「仕入値プラス1円」となるまで続く可能性があるというわけです。

     

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