※画像はイメージです/PIXTA

ガソリン価格の高騰が続いています。一般庶民にとってつらい状況ですが、ガソリンを販売しているガソリンスタンドにとっても大変な痛手です。売上数量が減少すれば、利益も大幅に減少するからです。そこで思い浮かぶのは、客を招くための「ガソリンの安売り」ですが、各スタンドが価格競争を繰り広げ、庶民の懐が多少でも温かくなる展開は考えられるのでしょうか。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

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    無益な値下げ競争を抑制する「ブラフ戦略」とは?

    上記のような無益な競争は、いずれも避けたいと思っているでしょうが、双方が合理的に考えると2円ずつの値下げが繰り返されて、悲劇が起きてしまうわけですね。

     

    これを避けるためには、「ブラフ戦略」というものが使えるかもしれません。当社が相手に向かって大声で話しかけるのです。「今日の当社は、100円で売る。そして、御社の売値を見る。御社も100円で売るならば、明日も当社は100円で売る。御社が99円以下で売るならば、当社は御社と同じ値段まで値引きする」というわけですね。

     

    相手が合理的であれば「今日だけのことを考えれば値下げして客を奪ったほうが得だが、明日以降のことも考えると値下げしないほうがよさそうだ」「値下げをしてもライバルが同じ値下げをすると、明日以降、客は従来と同じしか来ないだろう。それなら今日も明日以降も100円で売ったほうが得だ」と考えて、100円で売るはずです。

     

    あるいは、夕方の閉店後に大きなポスターを貼り出すという手もあります。「当店は、このあたりではいちばん安い店です。もし半径5キロ以内に当店より安い店を見つけたら、教えて下さい。当店もその値段まで値引きします」と書くわけです。

     

    客は「客にやさしい店だ」と考えて気に入ってくれるでしょうが、ライバル社のスパイがポスターを見ると、「わかっているだろうな。お前が値引きしたら俺は必ず追随するから、どうせお前は客の半分しか獲得できないのだぞ。値引きしようなどと考えるなよ」と読めるわけですね。

     

    それを見たスパイは会社に戻って「明日は100円で売ろう」と提案するはずだ、と期待するわけですね。

    離島2軒のスタンド…相手が倒れるまで続く「死闘」

    都会にはガソリンスタンドが多数あるので、ブラフ戦略が奏功するかもしれませんが、離島に2軒しかガソリンスタンドがないような場合には、ブラフ戦略にもかかわらず、相手が無限の値下げ競争を仕掛けてくる可能性もあります。それは、当方の倒産を狙っている場合です。

     

    当方がポスターを貼り出しても、相手は51円で売るかもしれません。当然大赤字になるわけですが、当方も対抗して51円で売ると大赤字になります。

     

    あとは、どちらが先に倒産するか、という勝負になるわけですね。当方が先に倒産すれば、相手は島内での独占企業として好きなだけ値上げができるようになりますから、今季の赤字などまったく気にならない、というわけです。経営体力の強いほうから値下げ合戦を挑まれたら、弱いほうは倒産を免れないかもしれませんね。

     

    以上、ガソリンスタンドが過当競争を繰り広げることによってガソリン価格が暴落する可能性について考えて来ましたが、実際に過当競争が発生するか否かは諸般の事情によるでしょうから、消費者として過大な期待は禁物でしょうが、上記のようなメカニズムが働き得るということは知っておいて損はないでしょう。

     

    今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、わかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

     

    筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

     

     

    塚崎 公義
    経済評論家

     

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