(※写真はイメージです/PIXTA)

日本の少子化が止まりません。この問題には政府も本腰で、手始めに「児童手当」の所得制限撤廃を検討している模様です。実現にあたっては、かなりの反論も出ると予想されますが、所得制限の継続に事務的費用や労力をかけるより、富裕層への課税を強化するほうが効率的だといえます。経済評論家、塚崎公義氏が解説します。

所得制限より、富裕層への課税強化を行うべき

少子化対策の一環として、児童手当の所得制限を撤廃することが検討されているようです。筆者は少子化を国難だと捉え、万難を廃して食い止めるべきだと考えているので、方向性としては大いに歓迎です。

 

高額所得者が「児童手当が支給されるようになったから、出産しよう」と考えるとは思われないので、効果は薄いでしょうが、少子化対策に本腰を入れるというメッセージにはなるでしょう。

 

加えて本稿が論じたいのは、そもそも所得制限というものの非効率性です。誰の所得が高いのかを調べる手間がかかる一方で、所得制限によって減る支給額はそれほど多くない場合が多いのですから、コストパフォーマンスが悪いといえるでしょう。

 

【児童手当の現状】

 

★支給対象

中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方。

 

★支給額

あああ
[図表1]児童手当の支給額

 

★所得制限限度額・所得上限限度額

児童を養育している方の所得が、図表2の①(所得制限限度額)未満の場合、図表1の支給額を、所得が①以上②(所得上限限度額)未満の場合、法律の附則に基づく特例給付(児童1人当たり月額一律5,000円)を支給。

なお、令和4年10月支給分から、児童を養育している方の所得が②以上の場合、児童手当等は支給されない。

※ 児童手当等が支給されなくなったあとに所得が②を下回った場合、改めて認定請求書の提出等が必要になる。

 

出所:内閣府ウェブサイト「児童手当制度のご案内」より
[図表2]所得制限限度額・所得上限限度

 

出所:内閣府ウェブサイト「児童手当制度のご案内」より

 

金持ちには払う必要がない、という意見は当然あるでしょうが、それなら所得制限を撤廃して全員に払った上で、金持ち課税を強化すればよいのです。子どものいる金持ちは児童手当をもらって課税強化されるので若干のプラス、子どものいない金持ちは若干のマイナス、ということで問題ないでしょう。

少子化は「国難」、費用は惜しまずに

所得制限を「高額所得者はダメ」から「低所得者だけ」に変更するなら、意味があるかもしれません。「産みたいけれど、金がないから諦めている」という非正規労働者カップルに「子どもが18歳になるまで毎月10万円支給する」と伝えれば、産む人も多そうだからです。

 

要検討なのは、「すでに生まれている子どもには児童手当を支払わず、来年以降に生まれる子どもだけに児童手当を支払う」という選択肢です。出産を奨励するのであれば、既に生まれている子どもには支払う必要がないからです。もっとも、国民の間に強い不公平感が生まれる可能性が高いので、そのあたりは理屈を振りかざすと危険かもしれません。

 

この案の最大の問題は、巨額の支出が必要になることです。実効性のある少子化対策としては、子どもを2人産めば暮らせるくらいの金額を支払いたいところですが、そうなると貧しい人が子どもを2人産むと、庶民より所得が高くなってしまう可能性が出てきます。それを防ぐためには、庶民にも十分な児童手当を支払う必要があるでしょう。庶民にも「子どもを産みたいけれども教育費等がかかるから我慢している」という人は多いでしょうから、大盤振る舞いをすることで、出産数が大幅に増えると期待されるわけですが、同時に費用も巨額になってしまうのです。

 

庶民にも支払うとなると、上記の効率性の観点から全員に巨額の児童手当を支払って、富裕層には増税する、ということも要検討ですね。実際には巨額の費用を賄う必要があるため、富裕層には大幅増税、庶民にも小幅増税、といったことが必要になるのではないでしょうか。

 

これは、国民的な議論が必要でしょうね。大盤振る舞いのよいところは、新しい需要が生み出される、ということです。そこに注目していただき、教育産業、玩具業界等、子ども相手の仕事をしている人々には、是非とも賛成して欲しいものです。

 

少子化が国難であって、放置すると日本国が消滅してしまうわけですし、それ以前に人口が減れば日本が国際的な影響力を持てなくなり、軍事面でも外交面でも苦労することになるでしょうから、筆者としては「増税されても構わないから児童手当を増やして欲しい」と考えています。

 

「数千年後に日本が滅びるか否かより、明日の生活が大事だから増税は嫌だ」と考える人も多いでしょうが、「数十年後の日本のためなら増税も止むを得ないから受け入れる」と考える人が多いことを期待しています。

「金持ち」の定義は高額所得者か、それとも資産家か?

日本では、金持ちというと高額所得者を指す場合が多いようです。所得制限は、その発想ですね。しかし、所得は低くても資産を持っている人は大勢います。数億円の銀行預金を持っているので働いておらず、所得が無いので住民税も払っていない、といった人には所得制限がかかりませんが、それをどう考えるべきでしょうか。

 

実務的に、人々の所得は税務署が把握しているけれども人々の資産状況は政府が把握できていないから、資産家を除外しようと思っても難しい、ということはあるでしょう。しかし、それならばマイナンバーを使って銀行預金等々の資産を名寄せして政府が把握すればよいと思います。それにより、相続税等の徴収も容易になり、漏れも減るでしょうから、一石二鳥ですね。

 

もっとも、反対する人も多いでしょうから、とりあえずは固定資産税の増税、相続税の増税を先に実施すればよいと思います。固定資産税は、地価の高い東京都心に住むコストを増すため、東京一極集中の緩和にも資することが期待されます。相続税は、配偶者も子も親もいない被相続人の遺産を兄弟姉妹が相続する際の税率を中心に大幅に引き上げればよいと思います。

 

もうひとつ、金持ちからの徴税ではありませんが、サラリーマンの専業主婦(サラリーウーマンの専業主夫を含む)が年金保険料を支払わなくてよいという制度は自営業者の専業主婦等と不公平ですから、これを廃止することも選択肢でしょう。

 

固定資産税、相続税、専業主婦の年金保険料については、それぞれ重要なので、別の機会に詳述したいと思います。

 

今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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