長引くコロナ禍……営業不振に陥ったテナントが、既存店舗を閉店する動きがでています。一方、銀座ではいわゆる「ラグジュアリーブランド」が出店ニーズを牽引しており、1件の募集物件に対して10社ほどが申し込むような事例もありました。今後も「銀座一等地」のニーズは衰えないのか、シービーアールイー株式会社(CBRE)の栗栖郁氏が、さまざまデータをもとに紐解いていきます。
立地によっては出店ニーズが弱含み
2021年のリテール賃貸市場は、前年に引き続き新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた。長引くコロナ禍で既存店舗の売り上げが減少したテナントが、物件オーナーに対して賃料減額や支払い猶予の支援を要請。
また、営業不振に陥ったテナントが、既存店舗を閉店する動きもみられた。ただし、そうした動きはQ1からQ3にかけて減少傾向にある。
銀座では、ラグジュアリーブランドが出店ニーズを牽引。ハイストリートの晴海通りにある募集物件では、10社ほどの申し込みの中から、立地改善の移転ニーズのあったラグジュアリーブランドが内定した事例があった。
並木通りの募集物件では、既に銀座エリアに2つの既存店舗を持つラグジュアリーブランドが、3店舗目の出店を決めた事例もあった。
2021年Q3の銀座ハイストリート空室率は、対前期比0.1ポイント上昇の5.2%(図表5)。ラグジュアリーブランドなどの需要が空室を消化した一方、中心地から離れたエリアでは空室が増えている。
ただし、マロニエ通りなどの比較的面積の大きい募集物件ではテナントが内定または引き合いがみられており、Q4には空室率が低下する可能性がある。
銀座ハイストリート賃料は、2017年から2019年にかけて上昇基調が続いたものの、2020年は下落に転じた。
2021年Q1とQ2は横ばいで推移し、Q3は対前期比0.6%減の24.15万円となった(図表6)。長期的な視点で物件を押さえようとする海外のラグジュアリーブランドが複数みられている一方、国内ブランドが集積するエリアの賃料は弱含んでいる。
出店ニーズがあるラグジュアリーブランドの中には、銀座4丁目の交差点に近い稀少な一等地の物件には、高額な賃料を支払ってもよいと考えるブランドが存在する。
そのため、2021年Q3のプライム賃料は40万円と、24期連続横ばいとなった(図表7)。株高を背景とした購買などによって、売り上げ好調な高級時計などの出店ニーズがある。
シービーアールイー株式会社(CBRE)
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2007年シービーアールイー入社。投資家や一般事業会社所有の不動産に対して、有効活用を提案するコンサルティング業務に従事。2010年リサーチに異動。グローバルならびにAPACレポートの日本パート作成に携わり、海外クライアントに対して日本のオフィス、物流施設、商業施設の賃貸市場に関する情報を発信。2014年から商業施設の賃貸市場に特化し、各種レポートの執筆とともに国内外のクライアントに対してマーケットの考察を提供している。グラスゴー大学院社会科学部、早稲田大学経営管理研究科卒業。
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