配偶者・子どもがない人の相続の注意点
配偶者・子どもがない方の相続人は、親が存命なら親、親がすでに亡ければきょうだいになります。また、資産構成が不動産に偏っていると、遺産分割のために売却が必要になるケースも考えらえます。
今回の遠藤さん姉妹の場合、長男と二男には子どもがいます。きょうだいとの関係は円満でも、もしきょうだいが先に亡くなり、おいめいが代襲相続する場合、同じ状況であるとは限りません。それを考えると、やはり遺言書は不可欠だといえます。
美香さんと香織さんは、自宅マンションばかりを心配していましたが、長く働いてきたことを考えれば、ほかにも資産があると思われます。遺言書が不動産だけの記載となっていると、そのほかの財産については分割協議が必要です。その点から、遺言はすべての財産について指定しておいたほうが安心です。
美香さんと香織さんは、長男と二男を交えて相談し、ふたりの間で、先に亡くなったほうの財産は、残されたほうがすべて引き継ぐという内容の公正証書遺言書を作成しました。
「安心しました」
「これでリタイア生活を楽しめそうです」
手続き完了後、お2人はホッとした表情を見せ、笑顔で事務所をあとにされました。
【対策と注意点】
将来的に想定される問題があるなら、速やかに遺言書を作成して備えておく
子どもや配偶者がない方の場合、だれが相続人になるのか把握しておく
配偶者や子どもがない方の場合、きょうだい(親が存命なら親)が相続人になるという点に注意が必要です。自身に実現したい展望があり、きょうだいがそれに理解を示しても、それだけでは確約になりません。その点をしっかり踏まえ、思いを実現できる対策を立てる必要があります。
※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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