「時間ができたからこそ」始まった習慣
「最初は本当に、軽い気持ちだったんです」
そう話すのは、首都圏で妻と二人暮らしをする正一さん(仮名・71歳)です。会社員として定年まで勤め上げ、現在は夫婦で月28万円ほどの年金を受給しています。退職金とこれまでの貯蓄を合わせた金融資産は数千万円規模にのぼり、住宅ローンも完済済みで、生活に大きな不安はありませんでした。
定年後、生活のリズムは大きく変わりました。仕事に追われる日々から解放され、自由に使える時間が増えた一方で、「何をして過ごすか」が新たな課題になっていきます。そうした中で、正一さんが足を運ぶようになったのが、近所のパチンコ店でした。
きっかけは、かつての同僚との再会でした。「時間もあるし、ちょっと気分転換にどうだ」と誘われたのが始まりだったといいます。最初は数千円程度、勝っても負けても大きな影響はない範囲で楽しんでいました。
当初はあくまで暇つぶしの一つでしたが、通う頻度は徐々に増えていきました。勝つ日もあれば負ける日もあり、「次は取り返せるかもしれない」という感覚が次第に強くなっていきます。
「負けても、その日のうちに取り戻せると思ってしまうんです」
気づけば、一度に使う金額も増えていました。数千円だったはずが、数万円単位へと変わり、それが週に何度も繰り返されるようになります。家計に占める割合としてはまだ小さいと感じていたものの、確実に支出は膨らんでいきました。
異変に気づいたのは、妻の良子さん(仮名)でした。通帳の残高が想定よりも早く減っていることに違和感を覚えたのです。
「こんなに減るはずないよね、と話したのが最初でした」
最初ははっきりと理由を言わなかった正一さんですが、問い詰められる中で、パチンコ店に通っていることを打ち明けました。良子さんは驚きを隠せなかったといいます。
「楽しむ程度ならいいと思っていましたが、金額を聞いて驚きました」
