高齢の両親のもとに通い、あれこれ面倒を見てきた女性。ところが突然、ずっと別世帯だった兄が、妻子と暮らす自宅を離れて両親と同居をはじめました。そればかりか、将来の遺産分割について、あまりにも不公平な条件を突き付けてきて…。一体どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。
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家族をマンションに残し、老親のもとにひとり戻った兄
今回の相談者は、40代のパート看護師の山本さんです。80代の父親の相続に不安があり、筆者のところへ訪れました。
山本さんの父親は、同じく80代の母親と同居しています。父親は以前脳梗塞を患ったことから片手が少し不自由ですが、生活には支障なく、また、認知症の兆候もまだありません。母親は大きな病気の経験がなく健康ですが、年相応の衰えはあり、ここ数年はかなり足腰が弱ってきました。
山本さんには50歳になったばかりの兄がいます。会社員の兄は、大学卒業後すぐに結婚して実家を出て、数回の転勤を経たあと、実家の隣駅に分譲マンションを購入しています。兄の家族構成は、妻・社会人と大学生の子ども2人の4人です。
3年前のことです。ある日突然山本さんの兄が実家に戻り、そこから会社へ通うようになりました。家族間のトラブルというわけではなさそうですが、実家で兄嫁や子どもたちの姿を見かけることはありません。
兄は両親の介護が必要だからと説明していますが、山本さんの両親は年齢的な衰えはあっても、2人で問題なく生活できており、まだ兄の手を借りる必要はありません。
それまでは、山本さんが仕事の合間や休日を使って、両親の世話を焼いてきました。山本さんのパート先は近所の耳鼻科クリニックで、ある程度自由が利く職場のため、両親はこれまで、山本さんに買い物や病院への付き添いを頼んでいました。しかし、兄が同居して以降、両親からの連絡はぱったりと途絶え、こちらから連絡しても、兄に気を使っている様子が見て取れるといいます。
遺産分割について、知らない間に取り決めが…
ある日、兄から「少し先の話だが、相続時の遺産分割について報告がある」と連絡がありました。話を聞いたところ、兄は、両親と話し合った結果、遺産相続の際は、不動産関係はすべて兄、現金の全額は山本さんが相続することになったというのです。
山本さんの父親は、広い自宅のほか、駅近に稼働率の高いアパートを所有しています。
驚いて言葉を失う山本さんに、兄は「不動産はすべて俺に、と書いた念書ももらっているから」と念押ししてきました。
山本さんは、兄が同居するずっと以前から、両親のサボートのために実家に通っていました。いきなり「両親の面倒はすべて俺が見ている、サポートで忙しい」と周囲に吹聴する兄に納得できません。そもそも、会社員の兄は普通に通勤している様子ですし、兄嫁や子どもたちの出入りも見られません。そのような状態で、一体何をサポートしているのかという思いもあります。
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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