(※写真はイメージです/PIXTA)

総資産約4億4,000万円の相続対策を進めるなかで、Fさん(60代)が新たに直面したのは、母親名義の口座にある約4,400万円の預金でした。専業主婦である母親の資産として見過ごしてしまいがちなこのお金も、実は税務調査で厳しくチェックされる「名義預金」に該当する可能性があります。判断を誤れば、後から追徴課税を受けるリスクも──。相続実務士・曽根惠子氏が、実例をもとに注意点と対策を解説します。

その4,400万円、本当にお母さんのものですか?

60代のFさんのご自宅にある600坪の土地については、専門的な視点から評価を見直すことで、評価額が「2億円から1億円」へと大きく引き下がる可能性が明らかになりました。

 

土地の目途が立ち、ひとまず安心したのも束の間、相続設計を進めるなかで新たな課題が浮かび上がります。それが、母名義の「預金」の出どころです。

 

Fさんから追加で寄せられたご相談は、次のような内容でした。

 

「母親の口座に約4,400万円の預金があります。母親は長年専業主婦でしたので、おそらく父が移したものだと思うのですが……。これに加えて、自宅に1,200万円ほどの現金もあり、父と母どちらのものか判然としません。これらも父の相続財産として申告しなければならないのでしょうか?」

 

実は、この「家族名義の口座にある、被相続人(亡くなった方)の資金」こそが、税務調査で最も厳しくチェックされる「名義預金」なのです。

税務署が「専業主婦の4,400万円」を疑う理由

相続税の申告において、税務署は「亡くなった方の名義口座」だけを確認しているわけではありません。配偶者や子、孫などの名義口座についても、その資金の出どころを厳しくチェックします。

 

Fさんのお母様の場合、次のような状況がありました。

 

・預金総額:約4,443万円(普通預金4,330万円、定期預金112万円)
・収入背景:長年専業主婦で、主な収入は年金のみ

 

税務署の視点に立てば、「自身の収入だけで4,000万円を超える資産を形成するのは難しい」と判断されるのが一般的です。

 

そのため、父親の給与や資産が母名義の口座に移されていたに過ぎず、実質的な管理は父親が行っていた、あるいは贈与の手続きが適切に行われていなかったとみなされる場合には、その預金は「父親の財産」として課税対象に含まれてしまいます。

 

さらに、自宅に保管されていた1,200万円の現金についても同様です。所有者が明確でない、いわゆる「タンス預金」は、一般的に一家の主たる稼ぎ手であった父親の財産と推定されます。

名義預金を「見える化」する

そこで、Fさんと共に母親の預金の内訳を精査しました。あわせて相続税申告を見据え、税理士とも情報を共有し、「現時点で相続が発生した場合にどのように申告するか」という方針の整理も進めています。

 

まず、母親自身の固有財産(これまでに受け取ってきた年金の蓄積など)を算出。そのうえで、それ以外の部分については「名義預金(父親を原資とする預け金)」として整理し、あらかじめ相続財産に含めておくのが妥当である、という結論に至りました。

 

F家における預貯金および現金の内訳は、次の通りです。

・父名義:定期預金 1億7,000万円
・母名義:普通預金 4,300万円
・手元現金:1,200万円

 

このうち、母名義の預金のなかで名義預金に該当すると考えられる額は約1,968万円(年金収入等を除き、父親を原資と推定される部分)。また、手元現金1,200万円についても同様に整理しました。

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