(画像はイメージです/PIXTA)

夫亡きあとも舅姑と同居し、親身に面倒を見てくれた長男の嫁。姑はいたく感謝しており、ぜひ財産を相続させたいと考えています。しかし、同居する家族であっても、息子の嫁には相続権がないため、そのままでは財産を渡せません。思いを実現するには、どんな方法があるのでしょうか。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

税金や遺留分のことを考えるなら…

先ほど説明した相続人以外に遺言を書く場合に、ほかの相続人の承諾がない、あるいは説明がないけれども有効かという質問を受けることがありますが、遺言も、ほかの相続人の承諾や説明がなくても有効となります。

 

養子縁組をするのも、遺言を書くのも、陽子さんの意思で行うことが可能です。遺言を書くのは陽子さん単独でできますが、養子縁組は月子さんと2人で結ぶ必要があります。

 

このように、長男の嫁である月子さんに財産を残してあげる方法には、養子縁組をする方法と遺言による方法と2つありますが、どちらの方法を取るのがよいでしょうか。

 

相続のときには、相続税のことを考える必要があります。とくに、貸マンションを何棟も持っている陽子さんのような資産家の場合は、税金が多額となる可能性があるので、税金のことを考えないと大変な負担となってしまう可能性があるからです。

 

月子さんが養子縁組をしないで財産を遺言に残してもらう場合は、相続でなく「遺贈」となります。遺贈の場合も贈与税でなく相続税となりますが、一親等の血族以外への遺贈は相続税が2割高くなります。月子さんが養子縁組をすれば、この2割加算がなくなります。また、月子さん自身が養子縁組により相続人となれば相続税の基礎控除が相続人1人分増えることとなりますので、節税にもなります。

 

さらに、例えば陽子さんが全財産を月子さんに相続させるなど、次郎さんとゆり子さんの遺留分を侵害するような遺言を書いた場合、養子縁組をしておいた方が月子さんにとって有利となります。

 

養子縁組をしない場合は、法定相続人は、次郎さんとゆり子さんと星男さんと星子さんの4人で法定相続分は3分の1、3分の1、6分の1、6分の1となります。

 

したがって、次郎さんとゆり子さんの遺留分は、それぞれ法定相続分の2分の1で6分の1となります。

 

これに対し、月子さんと養子縁組した場合には、月子さんも法定相続人となりますから、法定相続人が次郎さんとゆり子さんと星男さんと星子さんと月子さんとなり、法定相続分が4分の1、4分の1、8分の1、8分の1、4分の1となります。次郎さんとゆり子さんの遺留分は法定相続分の2分の1ですから8分の1となります。

 

遺産が6億円あったとすると、養子縁組をしていない場合は、次郎さんとゆり子さんの遺留分はそれぞれ6分の1で1億円となり、2人の合計が2億円となりますが、養子縁組をしていれば次郎さんとゆり子さんの遺留分は8分の1で、それぞれ7500万円となり、2人の合計が1億5000万円となります。

 

このように月子さんが支払う遺留分が5000万円も違ってくることになるのです。

 

遺産の金額が大きければ大きいほど相続税や遺留分の額の違いは大きいです。

 

以上のことから、「月子さんに財産を残すには、養子縁組をしなくても遺言を書けば財産を残してあげることは可能だが、税金や遺留分のことを考えると養子縁組をした上で、遺言を書いてあげた方がよい」という選択肢③が正解となります。

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士

 

 

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