
ある資産家男性には頭痛のタネがありました。若いときから浪費家で、そのせいで結婚生活まで破綻した娘の存在です。自分が亡くなったあと、相続財産をすぐに使い果たしてしまうのではと思うと、気が気ではありません。父親亡きあと、娘の生活を守る方法はあるのでしょうか。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。
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資産家の父が心を痛める、浪費家の娘の行く末
鈴木さんは、貸マンションを何棟も持っている資産家です。鈴木さんの妻はすでに亡くなっていますが、子どもに長男の太郎さんと長女のゆり子さんがいます。しかし、このゆり子さんは若いときから大変な浪費家で、それが原因で離婚もしています。ゆり子さんに子どもはいません。
鈴木さんは、子どもたちに遺産を半分ずつ分けたいと考えていますが、ゆり子さんに一度に渡してしまうと、あっという間に浪費するのではないかと心配しています。
鈴木さんは、ゆり子さんに渡す財産を誰かが管理し、その収益の中から毎月一定額をゆり子さんに支払ってあげるような方法はないかと考えています。
鈴木さんは、どうしたらいいでしょうか。
①ゆり子さんの浪費が心配なのであれば、全部長男太郎さんに相続させればよい。
②ゆり子さんが遺産を浪費してしまうのは自業自得で、鈴木さんが亡くなったときは、遺産の2分の1から4分の1の範囲で遺産を渡すほかない。
③民事信託を利用することによって、長男が不動産を管理して、毎月一定額ずつゆり子さんに渡すことができる。