1度目の緊急事態宣言で自殺が減ったワケ
■「ひとりの時間」が充実している人
コロナ禍による自粛は、人間生活に半ば強制的な孤独をもたらすものでしたが、テレワークやEラーニングでストレスが減って楽になった、という人も確かにいるようです。
2020年最終的に残念ながら自殺は増えたわけですが、1度目の緊急事態宣言の段階では、私たち精神科医の予想に反して、自殺者数はむしろ減っていました。
最近、夏休みが終わった9月1日に、子どもの自殺が増えることが問題にされています。
それだけ学校が始まるということが、学校のわずらわしい人間関係の再開ととらえる子が多いのでしょう。
おそらく、それは会社でも同じ。
Eラーニングやテレワークのほうが「楽だ」「落ち着く」と感じる人がそれだけ多く、コロナ自粛が人間関係のストレスから逃げる好機になったのかもしれません。
人間関係というのは、ともするとわずらわしさが先に立って、「面倒だ」「ひとりのほうが気楽でいい」という発想に傾きがちです。だけどそればかりでは、新しい人間関係、新しい世界の広がりをみすみす放棄することになってしまいます。
くり返しになりますが、
孤独が人によい作用をもたらすのは、完全な孤独のなかではありません。
人とのかかわりがあってこそ、はじめて孤独のメリットを得られるもの。
人とのかかわり合いは、私たちにさまざまな視点があることを教えてくれます。自分の発想とはまたひと味違う意見があることに気づかせてくれます。
ひとりの時間にとりとめなく考えたことでも、人に「こんなことを考えたんだ」と話すと、そこからまた思考が広がっていくというのもよくあることです。ひとりで延々と考えていても、なかなか思考の広がりは得られません。
それに、ひとりの時間は、人とのかかわり合いがあってこそ貴重なものになるのです。
ずっとひとりで過ごしていたら、なんとなくネットをしてみたり、ゲームをしてみたり、時間潰しのようなことばかりになってしまうでしょう。
私たちはひとりの時間を大切にするためにも、人とのコミュニケーションが必要です。そしてそのコミュニケーションにも、より広がりを持たせていかなくてはならないのです。