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「また教員になりたい」が海外に比べて少ない日本
■根っこにあるのは「自信のなさ」かもしれない
経済協力開発機構(OECD)が2019年6月に公表した国際教員指導環境調査では、「もう一度仕事を選べるとしたら、また教員になりたい」と回答した教員は、日本で54.9%でした。加盟48カ国・地域の平均値は75.8%なので、日本が大幅に下回っていることが分かります。
学級運営に関する質問では、海外に比べて日本は教室の秩序が保たれているにもかかわらず、「生徒を教室の決まりに従わせることができる」と答えた教師の割合が平均より3割も低く、自己肯定感が低い傾向にあることが明らかになりました。
この結果を受けて、教育評論家の石井昌浩氏は「以前と比べて子どもや保護者との関係構築が難しくなり、教員が自信を失ってきているのではないか。仕事時間の配慮だけでは解決できず、処遇の改善を図るべきだ」と述べています(SankeiBiz 2019.6.19)。
この「自己肯定感の低さ」「自信の喪失」というのが、教師が疲弊していく原因の根っこにある気がしてなりません。
教師が自信をもてない大きな理由として「教師になるために大切なことを学んでいない」ということがあると思います。
大学の教職課程では、教育論や教育心理学などの理論は学びますが、実際の学校現場で必要になる子どもとのコミュニケーションや授業のやり方などの「実践」を学ぶ機会がほとんどありません。
特に教育大学や教育学部ではない一般大学で教職課程を取る場合、教育実習を除いてほぼ座学のみで、しかも講師の話を黙って聞くだけの講義スタイルが中心です。いざ採用試験に合格して教師になれても、子どもたちの抱える複雑な課題に向き合う強さも、分かりやすい授業をするスキルも不十分なまま教壇に立つことになります。
しかも今はプログラミングや外国語活動などの新しい科目や指導事項が加わり、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業づくりが必要です。教師は自分たちが経験してこなかった新しい概念の授業をしなくてはならないため、ますます負担感が大きくなってしまうのです。
■ロールモデルや相談相手がいない
孤立する教師たちこういう場合に、手本となる先輩がいれば真似したり、アドバイスをもらったりできるのですが、実際には難しいようです。
HATOプロジェクトの調査でも、「あなたには、ロールモデルとなる(目指したい)教員がいますか」という問いに対して「目指したい教員がいる」と回答した割合は5割弱〜6割台にとどまっています。
私はこれまで多くの先生を見てきましたが、教師というのはとかく孤立しやすい職業だと感じています。
その理由はいくつかあります。