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「教師不足」が深刻化…懸念されるのは、「人材の質」
教職の道に進む学生・社会人は年々減少しています。
2021年度の公立学校教員採用試験の倍率(競争率)は全体で3.9倍と、過去最低だった1991年度の3.7倍に肉薄しています。特に公立小学校においては、2.6倍と、過去最低だった2020年度の2.7倍を下回りました。
教員採用試験の倍率は2000年度の13.3倍をピークに低下に転じ、それ以降は20年以上にわたって下がり続けています。
日本の「教師のなり手不足」はかなり深刻です。倍率だけで単純に論ずることはできないにしても、13人から1人を選ぶ採用と、3人から1人を選ぶ採用とでは、必然的に人材の質に差が出てくることになります。
公立小学校教員の採用倍率の低下を報じた毎日新聞の記事(2019年12月23日)にも、「組織で人材の質を維持するのに必要とされる倍率は3倍とされ、『危険水域』を割った」とあります。2倍を下回る自治体では、危険水域どころか警報レベルです。
■教員採用倍率の低下を招いた「3つの原因」
教師は決して子どもたちに人気のない職業ではないのに、どうして教員採用試験の倍率が低下しているのかというと、その理由としては大きく3つ考えられます。
1つは、大量退職、大量採用の波です。1971〜74年頃、第二次ベビーブームで子どもの数が増えました。いわゆる団塊ジュニア世代です。このとき、児童生徒数の増加に合わせて大量採用された教員が、一斉に定年退職のタイミングを迎えています。大量に退職する分を新規採用で補わなければなりませんが、思うように受験者数は増えていません。
2つめは、民間企業に人材が流れてしまうことです。一般企業の就職活動は大学3年生の3月から情報解禁となり、筆記試験や面接などの選考を経て、4年生の6月頃から内々定や内定が出始めます。外資系や一部マスコミなどは大学3年生の秋には選考があるため、さらに前倒しで就職活動をします。
それに対して、教員採用試験は1次が6〜7月、2次が8〜9月、そして合格発表は10月頃です。どんどん進路を確定させていく仲間たちの中で試験勉強を続ける精神的負担に加え、不合格の結果が出てから就活をしても遅い、かといって先に就活をして企業から合格をもらっても内定承諾書の提出を待ってもらえない、という物理的な難しさもあります。進路変更をする学生がいても仕方のないことかもしれません。
3つめが、教職へのイメージの悪化です。以前から教師はハードな仕事として知られていましたが、ここ10年ほどはそれが「ブラック労働」という負の文脈で語られることが多くなりました。
長時間労働による教師の過労死や教師間のいじめ問題が報道されたり、教師による体罰やセクハラ、いじめ自殺の隠蔽などの不祥事が暴かれたり、モンスターペアレントや学級崩壊に悩み疲弊していく教師たちがSNSで声を上げたり……。そういった情報が人々の目に触れやすくなったことで、「学校=ブラックな職場」というイメージが出来上がってしまいました。