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「三角形の定義って何だろう?」…反応は多種多様
■生徒が考えを深めるための「質問」
一口に質問といっても様々な分類ができます。機能による分類を考えてみましょう。たとえば、数学の授業で生徒に「三角形の定義って何だろう?」と質問したとしましょう。
Aさんは、塾の授業で講師が板書した内容を思い出そうとしました。
Bさんは、鉛筆を握り、教師が正解を口にするのを待ちました。
Cさんは、教科書のページをめくって定義の記載を探そうとしました。
Dさんは、隣の生徒に尋ねました。
Eさんは、三角形を思い浮かべ、角や辺の関係を検討しました。
Fさんは、「三角形」という漢字をノートに書いて意味を見出そうとしました。
Gさんは、「一角形」や「二角形」という物はあり得ないのかなと思いました。
Hさんは、三角形をいくつ集めたらどんな多角形ができるのかなと考えました。
Iさんは、「分からない」とあきらめて、手遊びを始めました。
Jさんは、三角おにぎりを思い浮かべ、「お腹が減った」とため息をつきました。
教師の質問は1つであるのに、それによって引き出される活動は十人十色です。そういう意味では「三角形の定義って何だろう?」は、幅広い活動を引き出す、自由度の高い質問だと言えます。一方で、IさんやJさんのような生徒も生み出します。
もしも教師の質問が、次のように変わると、生徒たちの活動はどうなるでしょう。
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●「三角形の定義について、教科書ではどう説明している?」
大多数の生徒が、教科書を開いて記載を探すという活動、つまりCさんと同じ活動(教科書のページをめくって定義の記載を探す)をすることが予想されます。この質問は、目で情報を探すという活動を引き出すわけです。
●「『三角形』というこの漢字、どういう意味?」
多くの生徒が板書を見て、漢字の意味を考えるでしょう。Fさんがやった活動に近いですね(「三角形」という漢字をノートに書いて意味を見出そうとする)。この質問は、情報を見て取って、思考するという活動を引き出します。
●「小学校の授業で、三角形ってどんなものだと習った?」
こう質問すると、多くの生徒が小学校の授業や教科書を思い出そうとします。見るとか思考するとかではなく、思い出すという活動を引き出します。これらの質問を行うことで、統率がとれた授業になりますし、スピードアップが図れます。
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「何をすればいいのか」が明確になるので、IさんやJさんも授業に参加できる可能性が高くなります。しかしその一方で、活動の自由さや多様性は制限され、個々の主体性や発想力、問題解決力等の醸成には繋がらないというデメリットもあります。
では、「三角形の定義を知ってるか?」という質問はどうでしょう。