「かたいカボチャの皮もむけちゃう最強ピーラー」とPOPを付けて販売、すると。

料理道具を使い比べて得た「知識」、お客一人ひとりの要望に応えられる過剰な「品揃え」、「売れ筋」ではなく、希少価値の高い「売れな筋」のラインナップ…。料理道を扱う飯田屋は世界中を探しても見つけられないユニークな店づくりを目指すという。※本連載は飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

「売れない商品は宝物」と断言できる理由

一般的には「売れない(と言われる)商品」が、飯田屋では仕入れが追いつかないほど売れるスター商品に育つことがよくあります。

 

そもそも、飯田屋のように売れな筋を取り扱う店は多くありませんから、それがスター商品になったら、そこには価格競争とは無縁のブルーオーシャンが広がっています。

 

「そんな夢のような話、一生に一度あるかないか……」

 

そう思われがちですが、ありがたいことに飯田屋では、毎月のようにスター商品が生まれています。それは、超小規模店でありながらロングテール販売を貫いているからです。

 

飯田屋では、33坪の小さな売場で約8500品目もの商品を取り扱っているので、お客様は自分に合うものかどうかを簡単に見比べられます。ネットショッピングと違い、手に触れながら大きさや重さが確認できることは実店舗の大きな強みです。とはいえ、道具は使わなければ、本当のよさを知ることはできません。そこで僕たちは、仕入れた商品は片っ端から試します。

 

スタッフルームのテーブルには、いつもピーラーやフライパンなどたくさんの道具が並んでいます。ピーラーは200種類以上を試しました。ここまで道具を使い比べるのは、飯田屋の従業員たちくらいではないでしょうか。

 

なぜそこまでするのかというと、使い比べるほどにそれぞれの特長が詳細にわかるようになるからです。見た目には特長のない地味な道具が、とんでもない性能を持っていたりします。スター商品の原石を発見する瞬間です。貝印の「SELECT100T型ピーラー」もそうでした。100円ショップで売っていそうなシンプルな見た目なのに、価格は1320円。当初はあまり売れない商品でした。

 

しかし、試してみると「これはすごい!」と、思わず声を上げてしまったのです。人参やじゃがいも、大根の皮がむけるのは当然で、プロの料理人でも面倒なカボチャの硬い皮でもするするむける逸品だったのです。

 

感動して「かたいカボチャの皮もむけちゃう最強ピーラー」とPOPを付けて販売すると、あっという間に評判が広まり、年間1万本も売れるスター商品へと成長しました。また、飯田屋にはさまざまなニーズを持ったお客様がいらっしゃいます。

 

たとえば、初めて包丁を握る子どものための「切れの悪い包丁」や、豆つかみゲームのための「つかみにくい箸」など、多くの店が取り扱わない売れな筋が求められ、飯田屋はそうしたニーズにお応えしています。だから「えっ! 本当にあるの!?」と驚き、一瞬で飯田屋のファンになってくれます。

 

その瞬間が本当に嬉しいのです。しかも、そこには他店との競争はありません。

 

こうした売れな筋は、少し見方を変えるだけでキラキラと輝きはじめます。「切れの悪い包丁」は、子ども向けコーナーを設けてPOPを付けて売り出すと、スター商品に生まれ変わりました。今では日本中の「切れの悪い包丁」を何種類も集め、初めての子ども用包丁として販売しています。

 

このように、飯田屋には「売れない(と言われる)商品」がたくさんあります。それが「飯田屋に行けば、あるかもしれない!」と、足を運ぶ目的を生み出します。売れな筋は広告の役割も務めてくれる、飯田屋にとって宝物のような存在なのです。

 

飯田 結太
飯田屋 6代目店主

 

 

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

効率度外視の「売らない」経営が廃業寸前の老舗を人気店に変えた。 ノルマなし。売上目標なし。営業方針はまさかの「売るな」──型破りの経営で店舗の売上は急拡大、ECサイトもアマゾンをしのぐ販売数を達成。 廃業の危機に…

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