【関連記事】不動産投資「やめとけ」の真相…リスクを知らずに失敗する人、不動産投資を始めて成功する人の決定的な差
最終ゴールは「毎年現金でアパートを購入できる」状態
最終的な不動産投資のゴールは、「毎年現金でアパートを購入できる状態」です。「そんな状況、つくれるわけがないだろう」と思う方も多いと思います。
ただ、当社のお客さまには本業利益の圧縮用に2000万~6000万円程度の築古アパートを現金で毎年1~2棟購入される方が複数名いらっしゃいます。
もちろん年収4000万円オーバーの属性の方が多いですが、給与所得が1000万円台でも、すでに所有が5棟を超え、毎年の物件のキャッシュフローによる現金買いにシフトした方もいらっしゃいます。
当社の顧客の7割強は、自身で会社を営む経営者の方か、医師・士業の皆さまです。そういった皆さまからよく頂くお声としては、オペレーティングリースや保険などと比べて単純な税の繰り延べにならず、かつ、年度を重ねると税金の戻りがどんどん積み重なるので、イメージよりはるかに現金が手元に残る、といったものがあります。
結局のところ、預金を預金のままにしていても殖えません。収益不動産を活用する場合は、給与所得の税還付を得られるのと同時に、その資金を再投下し、得られる賃料収入の規模も徐々に上がっていくので、複利でどんどん資産が殖えます。しかも、現金で物件が買えれば融資情勢などは一切関係がなくなります。加えて、2018年以降の不動産融資が厳しくなった状態でも達成者が複数名おり、再現性のある方法であることを補記しておきます。
拡大成長路線を取りたい方にとっては、「現金で物件を購入できる状態」を一つの目標点とするとよろしいでしょう。
大半のリスクはキャッシュがあれば対処可能
さて、不動産投資にも当然リスクはあります。
リスクにはどのようなものがあるか、ご自身で列記してみてください。おそらく、台風・漏水・夜逃げ・滞納などが挙がるのではないでしょうか。
まずもって、漠然とした不安を抱く方が多いですが、ここに挙げたトラブルは手元に十分な対応資金があれば処理可能なものばかりのはずです。
そして、酷なようですがリスクゼロで不動産賃貸業を営むのは無理です。絶対に何かしらのトラブルには直面します。
結局のところリターンに対しどこまでリスクを負えるか、というところですが、この限界値は火災保険の補償額+手元の現金が上限です。
モラルクレームの発生や近隣トラブルに巻き込まれるなどは、もはや運の要素もあるため自分が飲み込めるか否かの二者択一ですが、人間同士の感情的なトラブル以外のほぼすべては、現金さえあれば対処ができるものばかりであることに気が付くと思います。
トラブル発生については過度に悲観視する必要はなく、「どうにか対処できるものがほとんど」と考えると、漠然とした不安によるモヤモヤも多少は晴れるのではないでしょうか。
そこを踏まえたうえで不動産賃貸業を行えば、例えばコロナ禍においても、他事業のように収入が急に半減したりはしなかったりと、収入変動リスクに非常に強い収入源を得ることができます。
不動産賃貸業は、江戸時代の長屋のように、あるいはもっと前の時代から、安定的に続いた“商い”である理由が良く分かります。ただし、繰り返しになりますがトラブル時の一撃は重いので、有事の際の備えは他事業と比べても重要になります。
結論として、不動産賃貸業を営むうえでは手元に現金をなるべく早く、手厚くしておき、万が一のリスクの際の盾とするのが最重要です。そのための手段として、長期間の融資を活用し、毎月の返済額を低く抑えることを考えていくとなおよいでしょう。
投資初期は「5年以内に追加保有できる状態」を目指す
中古の耐用年数切れの木造物件は、最短で4年で減価償却ができます。ただ、逆をいうと理論値を攻めると4年後には建物の簿価が1円になり、減価償却メリットが得られなくなるということでもあります。
なので、そこまでに追加で不動産所得を圧縮できる物件の追加取得を目指します。1棟目に自己資金を投下し過ぎてはいけない理由がここにあります。
金融機関からすれば預金残高こそが“正義”なので、残高は極力高い状態を保ったほうがよいです。そのためには、物件保有中も通常の本業からの貯金も怠らないようにしてください。
そして、減価償却費を除いた状態では、きちんと黒字で物件を運営し続けていることも重要です。減価償却費はあくまで意図的な赤字をつくるためのツールなので、何でもかんでも赤字でOKというわけではありません。
2棟目の購入の際も基本的には融資を使うことになりますが、銀行マンは投資家の帳簿がどうなるかを把握していますので、きちんと見るところは見ています。逆にいうと、減価償却前利益がプラスであれば、確定申告が赤字になっていても事業者としての評価に影響はなく、次の融資は問題ない場合が多いということです。
そして、減価償却費がなくなる問題に直面する頃には1棟目の元金返済も進んでいるはずなので、投資初期段階では長期譲渡での売却も絡めたほうがよいです。
個人所有の場合、物件を保有してから6度お正月を超えると、譲渡所得の区分が「短期譲渡」から「長期譲渡」に変わります。
そうすると、売却益への課税割合が39.63%から20.315%まで下がります(2021年現在)。当然、手元に残せるキャッシュが大きく変わりますので、それも絡めて自身の資産規模を拡大していきます。
物件が実際に良いタイミングで売れるかどうか不安な方は、節税効果は薄くなりますが初回申告時に法定耐用年数を5年以上で申告するのもよろしいでしょう。実際のところ、耐用年数を長くする分には費用が減って税額が増えるため、耐用年数を長く申告することに対し指摘があったというお話は聞いたことがありません。私の知っているなかでも、耐用年数切れの木造物件を耐用年数6年で申告している方もいらっしゃいます。
そして追加購入・売却、そういった方法を繰り返して金融資産が手厚くなったあとは、減価償却が切れた物件でも、無理に売る必要はなくなります。
なぜなら、事業者としてやはり黒字会計であることを重要視する金融機関もありますので、償却メリットを享受したあとは、専業大家として黒字を出せるツールとして活用するわけです。減価償却なしであれば、多くの場合できちんと黒字をつくりやすいのも不動産賃貸業の特徴です。
以上をまとめると、投資初期における基本戦略は次のようになります。
①減価償却メリットで所得税還付+物件単体のキャッシュフロー+本業からの貯金で預金残高をどんどん殖やしていく
②減価償却メリットが切れた物件は長期譲渡のタイミングで売却し、手元の現金を手厚くする
③償却資産を追加取得し、節税メリットを継続して享受できるようにする
④十分な節税効果を得きったあとは、キャッシュマシーンとして残しつつ、そこから得られるキャッシュフローを再投下して規模拡大
そこまでいければ、築古物件100%のポートフォリオに、都心物件や新築物件といった高資産性の安定資産を組み入れていくという選択もアリになります。
これは私自身も実際に実践している方法ですが、現在の日本の税制・融資状況・市況において最速最短で資産を拡大する方法であることは間違いないです。
実際にこの方法で当社のお客さまでも実質的に専業大家としての属性を確立した方が10名弱いらっしゃいます。拡大ペースは人によってまちまちですが、再現可能な方法ですので、一つの指標としていただければと思います。
穴澤 勇人
コスモバンク株式会社 代表取締役
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】